なにわの白②【男主】 (ページ10)

今日:6 hit、昨日:20 hit、合計:110,518 hit

by your side ページ10

「Aくん！」
『おー、佐野。久しぶり』

テレビ局で偶然会った佐野。
彼らのグループが番組を持ってからよくこういう場で会うようになった気がする。

「この前も会いましたやん」
『そうやっけ』
「もー！忘れるなんてひどい！」

膨れっ面になる佐野は年相応で可愛い。
ごめんと謝るとお昼奢ってくださいとおねだり付き。

出会った頃の印象が抜けないというのは本当のようだ。
完全に親心のそれ、俺に断る選択肢はなく彼に奢ってしまう。

「Aくんのドラマ見ましたよ」
『ありがとう』

知り合いに自分の作品を見てもらえるのはとても嬉しい。
ベタ褒めしてくれる人もいれば辛口の人もいる、そのバランスが今後の成長にも繋がるので見られる恥ずかしさはあまり持ったことがない。
お世辞でもそれは素直に受けとる、そんな感じ。

すると佐野が無言で近付いてくるからどうしたのかと思っていたら、気付けば壁と佐野の身体に挟まれていて。
所謂壁ドン、乙女向けのやつ。

「こうやって…相手の女の子、口説いてはったやろ」
『おー。ほんまはもっと身長差あったけどな』

特に気にすることもなく佐野が話をしだすので、俺もそのまま耳を傾ける。
俺より背の低かった佐野は、気付いたら目線が変わらないくらいになっていて。
やっぱり子供のままじゃないんだな…としんみりする。

「Aくん」
『んー？』
「僕、背伸びたんです」
『そやな。昔はこんなやったのに』
『Aくんのこと、こうやって隠せちゃうんです』

子供みたいな言葉でも、動作は大人びていて。
演技の幅が広がるばかりの佐野の成長をこんなところで感じるとは。

でも俺を抱きしめる佐野は親に縋る子供で、伝わる鼓動ははやくて。言動がちぐはぐしている佐野はやっぱり子供なんだと背中を優しく叩く。