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ずるずると田中に引きずられ俺の前に来た松村くんは、俺にもわかるくらい緊張している。
文面だけ読むと彼と目が合わないと思うだろうが、ガッツリこっちのことを見ている。
松村「こ、こんにちは、Aくん…」
『どうも。松村くんもお元気そうで』
松村「…！はい！」
かっこいい…という声も俺の耳に届いているが、以前発作だから無視していいと田中に言われたから言う通りにする。
とんでもない相手に会ってしまった。田中がいてよかったけど、俺は未だに松村くんをどう扱っていいかわからない。
目で助けを求めると、田中がニヤニヤしてくる。本当に最悪な組み合わせ。
田中「お前ら出会って10年くらいでしょ？なんで未だにそんななわけ？」
松村「11年だ間違えるな」
田中「そういうとこがキモいと思う。Aくんも引いちゃうでしょ」
松村「はっ…」
俺に聞かれても、と答える前に松村くんが光の速さで訂正していた。怖い。
引いてはないが、怯えてしまったので心の中で謝ろう。ごめん松村くん。
松村「俺はその…Aくんと仲良くなりたいとかじゃなくて…ファン目線で満足だから…」
『いつも応援ありがとう？』
松村「本当にAくん大好き何これ録音していい？」
田中「待て待て待て落ち着け北斗」
俺に対して触りたいけど触れない！みたいな手の表現をする松村くんは正直に言おう、変な子だ。
顔が綺麗だから誤魔化されてるのだろうが、自分が対象になってるのを自覚するとすごく怖い。
たまにいるよね、こういうファン…という印象しかないのは松村くんのこういった部分にある。
俺は別に否定もしないし拒絶もしないが、彼が長年こういった距離感・態度なので親しくなるとかそれ以前の問題なのだ。それ以外はいい子なのに、人間というのは未知だなあ。
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