【メンズ校】Amour à l’infini ③【男主】 (ページ43)

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※野上side ページ43

「行くな」

行くなと言っても行くような奴だと思ってた。

『……うん。そうする』

その瞬間、俺の中にまた新しい感情が芽生えてしまったのをこの男は理解しないだろう。

　

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「そんなにあの人が心配なのか」
『え？…ああ、一応世話になったし』

今日がデートの日であるというのに藤木先輩は籠城。
成績が落ちた結果判断が鈍ったのだろう、あの人の固定概念はこの学校によって"お堅い"からな。

やけに張り切ってる桃井とそれに巻き込まれる牧…もしかしたらここにこの恋人もいたのかもしれない。
それを壊したのは俺なのに、こんな質問は少なからず俺にも罪悪感があるのか……ただの意地悪か。

『英敏くんは勘違いしてるようだけど。俺は元々あの人の恋路に首突っ込む気はなかったんだ』
「そうなのか？」
『俺は女に良い顔できないからね』

宣杜Aが女の嫌う理由を、ちゃんと聞いたことはなかったな。

最初は好きな相手が異性を好きになることに嫉妬してるだけだと思っていた。
が、相当、根から女子を毛嫌いしている。

俺からすると信じられないが、その価値観がまずAのような人間からは疎まれるものだ。

興味がないわけではない。
Aに対して"ない興味"などないのだ。全部知りたい。

ただこの先の人生短いわけでもないから触れていないだけで。

以前己のメカニズムを矯正しようとした話を聞いたとき、そういう経験を得た経緯をなんとなく理解したが、それと異性への嫌悪感はイコールでない気がして。

この恋人はまだまだ謎だらけ。
表に出さないことに慣れすぎた弊害か、無意識に防衛本能が働いてるのだろう。

「自称世渡り上手だろ」
『まあ必要であればエスコートくらい出来る』

英敏くんは話すのもままならないだろうけど。
目を細めて笑いながら俺の髪を触るA、こういう時は話を逸らしたい合図。

俺のことを"くん付け"で呼ぶときは大抵弄るか誤魔化すか、茶化すような呼び方をするのは野上と呼んでいたときから変わらない。

「…Aはどうしてそこまで避ける」
『必要ないからさ』
「俺はお前のことを知りたい」

強引だが、少しだけでも踏み込む隙を作る。
髪を触れる手は止まったが、顔は相変わらず余裕そうで。