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記憶に残らないくらい無の状態になってたら、扉が開く音がした。
強引に開かれたその先には、なぜか野上がいて。
驚く先輩や養護教諭が見えてないかのように真っ直ぐ俺に歩み寄ってくる愛しい人は、細い腕で俺の腕を掴み上げる。
力の入らない俺の身体は、簡単に保健室の外へ誘導された。
『野上』
野上「…大丈夫か」
『どう見える？』
野上「重症だ」
まあ、色々と重症かもしれない。
この場の慣れなさも、野上への盲目さも。
藤木「ちょいちょいちょい！野上何してんねん！」
野上「撮影は終わりで」
藤木「アカン！もうちょっとかかる！」
牧「まあまあまあ一旦落ち着きましょう！！」
牧主税、いたんだ。
藤木「そもそも野上が手伝ってくれないから宣杜がなあ」
野上「……元々俺がご指名なんだろう」
藤木「お！野上ようやっとやる気になったか！？」
牧「野上どうしたの」
野上「ここにあいつを置いておけるわけない」
牧「まあ確かにそうだけど」
ぼけっと聞いてたけど、野上が養護教諭とパンフレットに載るってこと？
待ってほしい。待ってくれ、待とう。落ち着こう。
だったら俺がやったほうがいい、目の前でそんなことされたら俺その辺の物振り回して人ひとり殺しかねない。
『俺、大丈夫だから』
野上「そんな死にそうな顔してよく言えたな」
『野上が浮気するほうが嫌だって』
野上「はぁ！？」
牧「ああ…そういうことになるわけね」
『そういうことになるわけよ』
野上「たかが写真1枚だろうが！」
『俺はその1枚も撮ったことないし！？』
野上「今そんなこと言ってる場合か！！」
『言ってる場合ですけど！』
藤木「お前らさっきから何揉めてんの！？」
うるさい先輩と牧主税によって一旦中断される。
この距離で俺と野上が痴話喧嘩してるのに気付かないこの先輩は天性のアホだと思う。
もしかしたら気付いていてわかってない顔してるのかもしれないけど。
付き合って1週間のカップルのようなしょうもない口喧嘩。
俺は野上に他の女と写真撮ってほしくなくて、野上は俺が異性が苦手なのを知ってしまったから止めているわけで。
『それくらい耐えれるし。もう何枚か撮ったし』
野上「お前俺が体調だけ心配してると思ってないか」
『違うの？』
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