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保健室から宣杜に連行されたときの話。
今だからわかる、あれは俺を誰かに取られたくなかったんだと。
好きな人が誰かと話してるだけで嫉妬、なんて可愛いものじゃなかったんだ。
俺が言うのもなんだが、あいつは本気を出せば簡単に俺を閉じ込めてしまうだろう。
宣杜Aは俺を通すとひどく人間らしく、醜い感情を吐き出す。
そこがまた愛おしい。
俺を愛しているんだという実感を得る。
そう思う俺も大概おかしくなっている。
全部あいつが悪い、もう俺たちは共存していくしかないようだ。
「俺のなんで気安く触れないでもらえますか」
冷静に言ったつもりの言葉は、多分拙い言葉として吐き出された。
宣杜に抱き着けば簡単に落ち着く感情。
少し速い鼓動に気分が良くなる。
この男はやはり自分のことが好きなのだと安心するからだろうか。
しばらく言葉が纏まらなくて、寂しかった気持ちを埋めるように抱き合った。
俺を優しく、されど強く抱きしめる腕が好きだ。
宣杜が俺の名前を呼ぶたびに、困らせたくなって、拗ねるように無視をする。
お前は俺のことだけ考えればいいのだと、思い知ればいい。
しかし謝らなければならない。
女に買った物を忘れたまま所持していたことを。
好きな人を傷付けるのはこんなにも辛いものなのだと、初めて知った。
それにA、と呼ぶ機会だって失い続けている。
たった一言の名前なのに、喉でつっかえる好きな人の下の名前。
『……ねえ、そのままでいるなら食べちゃうよ』
たまに見せる雄の感情が、俺を更に沼に突き落とす。
食べてくれればいいのに、宣杜は煽るだけでちっとも俺とそういうことをしたがらない。
こういうのは段階を踏まないとダメだと急に常識人ぶる。
そういうところも大事にしてくれてて好きだが、俺がそういうお年頃なのを忘れたのか。
自然と女側を受け入れてしまってはいるが、抱いてくれないならと宣杜を押し倒したこともある。
あいつはなんて言ったと思う？野上はずっと童貞がいい、だと。
どういう理屈なんだ、馬鹿なんだろうか。
…あいつは相当の馬鹿だった。
『今度は俺に似合うやつ買ってよ』
「次はお前と出かけるために、島の外に出る計画でも立てよう」
『俺、お揃いの何かが欲しいな』
「なんでもお揃いにしたらいい」
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互いにこうなったのは相手の所為にしています
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