検索窓
今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:6,315 hit

4羽 ページ6



師走くんが帰って、寂しくなった。
今までと同じ景色の筈なのに、何かが違う感覚がした。


「…彼、とっても不思議…」


どこまでも純真で、どこまでも真っ直ぐな心を持った師走くんは、まるで鳥みたいに自由な人…


「…私も鳥なんだけどな…」


以津真天は怪鳥。
人の顔に曲がったクチバシ、
そこから伸びるノコギリのような牙。
下半身は蛇ようなもので、
その大きな翼には一枚だけ金の羽があった。

人間たちはその羽を欲しがったそうな、
以津真天はそんな人間たちを恐れ、
死体を放棄する人間たちを嫌い、
いつまでも、いつまでもと囁きかける妖怪となったそう。


諸説は沢山あるけれど、人間たちが
どれだけ欲に溢れた生き物なのか理解ができる。

現に、今まで来た使用人たちは
以津真天の血を多く引く私を狙ってきた。
とても、怖くて、悍ましかった。

先祖返りは始祖と同じ運命を辿ると聞いたことがある。きっと先祖も同じ思いをいたんだろうな…


「…私もいつか、この空を飛べるかな…」


怪鳥の血を引いた私だけれど、
一度もその翼をはためかせた事はない。
羽ばたいてみたい…この空を飛べたら、どれだけ気持ちのいいことか…

けれど、できない…
私の外出時間は学校の登下校のみ。
あとは厳重に家に閉じ込められてしまうから。


「籠の中の鳥とは……よく言ったもの」


あぁ、早く師走くん来ないかな…
少しだけ変わった景色の中、目を閉じる。
違和感はあるけれど、ある意味よく眠れそう。

5羽→←3羽



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (10 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
8人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:スート | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年3月20日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。