4羽 ページ6
夜
師走くんが帰って、寂しくなった。
今までと同じ景色の筈なのに、何かが違う感覚がした。
「…彼、とっても不思議…」
どこまでも純真で、どこまでも真っ直ぐな心を持った師走くんは、まるで鳥みたいに自由な人…
「…私も鳥なんだけどな…」
以津真天は怪鳥。
人の顔に曲がったクチバシ、
そこから伸びるノコギリのような牙。
下半身は蛇ようなもので、
その大きな翼には一枚だけ金の羽があった。
人間たちはその羽を欲しがったそうな、
以津真天はそんな人間たちを恐れ、
死体を放棄する人間たちを嫌い、
いつまでも、いつまでもと囁きかける妖怪となったそう。
諸説は沢山あるけれど、人間たちが
どれだけ欲に溢れた生き物なのか理解ができる。
現に、今まで来た使用人たちは
以津真天の血を多く引く私を狙ってきた。
とても、怖くて、悍ましかった。
先祖返りは始祖と同じ運命を辿ると聞いたことがある。きっと先祖も同じ思いをいたんだろうな…
「…私もいつか、この空を飛べるかな…」
怪鳥の血を引いた私だけれど、
一度もその翼をはためかせた事はない。
羽ばたいてみたい…この空を飛べたら、どれだけ気持ちのいいことか…
けれど、できない…
私の外出時間は学校の登下校のみ。
あとは厳重に家に閉じ込められてしまうから。
「籠の中の鳥とは……よく言ったもの」
あぁ、早く師走くん来ないかな…
少しだけ変わった景色の中、目を閉じる。
違和感はあるけれど、ある意味よく眠れそう。
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