10羽 ページ12
『師走くんへ』
バイトで津天家に行けば、
斎藤さんに俺宛の手紙を渡された。
この字は、真弥…?
『師走くんへ
急にこんな手紙をごめんなさい。
師走くん、ちょっと早いけどお別れです。
私は津天家を出て、妖館に行きます。
実は、あの後両親と話をしたんだけれど
認めてもらえなくて…
だから、師走くんの様に家を飛び出そうと思います。
少しの間だったけれど、ありがとう。
また電話してください。』
手紙と共に入っていた電話番号…
前に交換したやつとはまた違う番号だ…
そっか、真弥は行っちゃったんだね。
「駆くん。」
「?はい」
「私はあのように笑うお嬢様を初めて見ました。
これもきっと、あなたのお陰ね、ありがとう」
「!…いえ!
俺はただ、真弥…さんのお世話をしてただけです!
あ!そうだ!俺、真弥さんと約束したんです、
真弥さんがここを出て行く時、俺も出ていくって!」
「そうなの…
わかりました。
じゃあ、はいこれ」
斎藤さんから渡された1枚の封筒。
んん?なんだか分厚いぞ?
「これは私たち使用人からの退職金。
これで、真弥さんとデートしてきなさいな」
「えぇ!?」
封筒の中身はそれなりのお金が入ってて、
慌てて顔を上げれば、斎藤さんを含む使用人たちがニヤニヤと俺を見ていた。
「駆くん、お嬢様の事好きなんでしょ?
なら、頑張ってアタックしなよ!」
「お嬢様は外の世界を知らない分、鈍感だからねー、苦労するよ、駆くん」
「うぇえええ!?
い、いつから知ってたんですか!?」
「おや、女の勘を舐めちゃいけないよ。」
アッハハ!と斎藤さんが豪快に笑った事で、
ワッと盛り上がる。
うぅ…みんな知ってたんだ…でも…
「嬉しいです!俺、頑張ります!!」
よぉし!まずは新しいバイト探しだー!!
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