【ツキウタ。】空の先をいく走者たち【神無月郁】 (ページ5)

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早朝

あたしは日課であるランニングに出る。
家の者がまだ寝静まっている間に出て
そのまま学校に行く。

「はっ…はっ…はっ」

残暑が残る9月。
まだまだ暑くて、汗が落ちる。
首にかけてあるタオルでそれを拭って
解けかけてる靴紐を締める。

「よしっ…！！」

そして、また走り出して
角を曲がった所で_____
あたしは彼と再会した。

ドンッ！！

「いっ！」

「あ！すみません！
大丈夫で______あ！！」

「！あなたは…あの時の…」

茶色の髪と少年らしい顔立ち…
あの時、あたしの走りを見ていた彼だ。

「え！？知ってるの！？」

「一瞬だけ目が合ったよね？
あれだけ情熱的な目で見られたら流石に覚えてるよ」

「ぁ…ご、ごめんなさい！
綺麗な走りだったからつい…」

「ううん、大丈夫。
そう言ってくれて嬉しい。
…その姿を見る限り、あなたもランニング？」

「は、はい！
もってことは…あなたも？
えーっと…」

赤くなったり青くなったり、
コロコロ変わる表情を面白おかしく見ていると
コテンと、首を傾げられた。

「あ、ごめんなさい。
あたしは鎌足切那。
近くの女子校に通う1年です。」

「あ、俺は神無月郁です。
同じく1年生です！
よろしくお願いします！鎌足さん！」

「切那でいいよ。
同い年だし、敬語もいらない。
陸上部同士、仲良くしよ？」

「うん！よろしくね！切那！」

差し出した手を快く握ってくれた彼の手は、
とても温かくて、少し大きかった。