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鎌足家の後続と、幸せの為
そこに切那個人の幸せがないと垣間見え
俺は切那の手をギュッと握った。
「切那は道具じゃない…
切那だって、一人の人間だ。
先祖返りとか、妖怪とか、関係ない」
「！」
切那がハッと息を飲むのが聞こえる。
チラリと見れば、つり上がった目を大きく見開いていて、瞳を揺らしていた。
「娘の一人も幸せにできない家なら、
俺は切那を連れ出します。」
「……切那、あなたはそれで幸せなの？」
「…郁は、関係ないって言った。
先祖返りとか、名家の娘だとか、
妖怪とか…そんなの、関係ないって…
そんな人に連れ出してもらえるなら、
本望だよ。
あたし、運命を信じるよ。」
“始祖と同じ運命を”
切那はそう言い切って
俺の手を握り返してくれた。
すると、切那のお母さんは
静かに目を閉じて踵を返した。
「……勝手にしなさい。」
「「！！」」
「でも……時々は、帰って来なさい。
少しは…娘の心配をさせてちょうだい」
「！お母さん…」
「……郁さん、でしたね」
「！はい…」
「この家には男性はおりません。
ですから、あなたに鎌足を任せることが増えるかもしれません。
そのお覚悟がよろしくて？」
「……はい！
それが、切那のためなら。」
「……娘を、頼みました。」
切那のお母さんはそう言い残して
奥へ行ってしまった。
もうここに用はないと、
切那に手を引かれ外に出る。
「郁、ありがと…」
「ううん…なんか、ごめん。
こんな勢い任せみたいなことして…」
「ふふっ、いいの。
それが、郁らしいから。」
ギュッといつの間にか
指を絡め合う形で握った手に力が入る。
「……あたし、女らしくないよ」
「切那は立派な女の子だよ」
「……あたし、名家の娘だよ。」
「それでも一人の人間でしょ？」
「……あたし、妖怪だよ」
「切那は切那。
優しくて強くて、可愛い
俺の彼女さんだよ」
「……うん…ありがと。」
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