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「それ以上はオーバーワークだよ、染岡」
「A、お前まだ帰ってなかったのかよ」
辺りはもう既に日が暮れ始め、赤く染まっている。染岡はみんなが帰った後も1人で必死に特訓していたのだろう、全身汗だくで息も上がっている。俺はきっとそうだと思い持ってきた、タオルを手渡した。
「悪い」
「身体を壊したら元も子もないよ」
「……これじゃあアイツに敵わない。豪炎寺には負けたくないんだ」
「染岡……」
染岡は俺が想像していた以上に焦っているんだ。こんな無茶な特訓をする程に。
練習を再開しようとする染岡の腕を掴み、慌てて引き留める。これ以上は冗談抜きに身体を壊しかねない。
「こんなんじゃダメなんだ! 1年にだって当てにされない、ストライカー失格だ」
「少なくとも、俺は染岡を雷門のエースストライカーだと思ってるよ。この間だって、染岡が真っ先に俺を助けてくれた」
「それはお前が……」
「俺は期待してるんだよ。豪炎寺くんにじゃない、染岡に」
「A……」
豪炎寺くんのシュートが凄かったのは事実だが、染岡はずっと一緒にやってきた仲間だ。他の選手たちよりも贔屓目で見てしまうのも致し方ない。
染岡はAの言葉に照れたように頬を掻く。どうやら自信を取り戻したようだ。
「お前の期待を裏切らないようにしなきゃな。よし、豪炎寺よりも強力なシュートを打ってやる! そうとなったら特訓だ!」
「だから今日はもうダメだって!」
調子を取り戻してくれたのはいいが、言う事を聞いてくれないのは困る。無理やり身体を引っ張り、河川敷のグラウンドから連れ出す。染岡に「意外と力が強い」と文句を言われるが、聞こえないフリをした。
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むた(プロフ) - 星猫さん» 評価ありがとうございます! とても励みになります。 (2021年9月7日 17時) (レス) id: 43b2fdf14a (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - もう一つのpcがしました。初めまして!とっても素敵です!高評価しました! (2021年9月7日 13時) (レス) id: 7d3fe1e696 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むた | 作成日時:2021年9月2日 18時