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初めての練習試合で疲れたのか、というよりは散々痛めつけられたせいだろう。全員が満身創痍で地面に横たわっていた。
傷だらけの身体を治療しようと、秋と消毒液を手に持つ。新聞部の取材で見に来た音無さんも先程の試合に感動したらしく、手伝ってくれるという。人手は多いほうがありがたい。
一通り手当が終わり、それぞれが帰っていく姿を眺めていると、風丸に呼び止められた。


「なあ、一緒に帰らないか?」
「分かった。少し待ってて」
「ああ」


救急箱を部室に戻し、ボトルを片付ける。あんまり待たせると悪いから、ジャージのままでいいや。急いで風丸のもとへ足を運ぶ。校門の前で待っていてくれた彼は俺を見つけると微笑み、肩を並べて歩き出した。


「サッカー部、入ってくれてありがとな」
「廃部にならなくて良かったな」
「風丸のおかげだ。でも無茶はしないで」


現にユニフォームに隠れている部分まで痣や擦り傷で溢れていた。勝利してくれたことは嬉しい。だが、みんながボロボロに傷つく姿は見たくなかった。
不意に腕を掴まれ顔を上げると、風丸の透き通った瞳と視線が絡む。「心配させて悪かった」と謝る風丸に心の中で溜息を吐いた。本当、俺は守といい風丸といい、どうも2人に弱い。これ以上怒るのも申し訳なくなり、話題を変える。


「そういえば目金くん、戻ってきてくれるかな」
「どうだろうな、案外本人は気にしてないんじゃないか」
「そうだといいんだけど」


帝国戦がトラウマになっていないだろうか。もし試合がダメなら、俺と同じマネージャーでも……と考えていると、隣で風丸が「Aは本当、優しいな」と顔を綻ばせる。
そうだろうか、俺は風丸のほうが何倍も優しいと思うけど。今も別にそこまで近くないのに、ちゃっかり俺の家まで送ってくれている。「また明日」そう告げると風丸はもとの道を引き返して行った。ほら、やっぱり彼のほうが優しい。

次の日、風丸は部室のドアを開けると目金を見てご機嫌なAの姿があり、再び顔を綻ばせるのだった。

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むた(プロフ) - 星猫さん» 評価ありがとうございます! とても励みになります。 (2021年9月7日 17時) (レス) id: 43b2fdf14a (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - もう一つのpcがしました。初めまして!とっても素敵です!高評価しました! (2021年9月7日 13時) (レス) id: 7d3fe1e696 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:むた | 作成日時:2021年9月2日 18時

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