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ピピピッと煩いほど響くアラームの音で目が覚める。確か今日は10時に河川敷で約束をしていたはずだ。まだ冴えきってない頭を無理やり働かせ、時間を確認する。
しまった、時計の針は既に10の数字を軽く超えている。アラームの設定を間違えたのか、あるいは2度寝をしてしまったのか、今はそんなことを考えている余裕はない。急いで支度を済ませ、家を飛び出した。


「遅いぞA!」
「ごめん守、さっき起きた」


「全く!」と怒ってる守に、両手を合わせて謝る。どうやら今日は他に人が居ないらしく、俺が来るまで暇だった守はリフティングの練習をしていたようだ。キーパーの彼には不服だろう。


「なあ、シュート打ってくれよ!」
「ええ、でも俺サッカー上手くないって……」
「そんなこといいからさ!」


サッカーが大好きな守にとって、上手い下手は関係ないらしい。仕方なく大して威力もないシュートを打つと、嬉しそうにボールをキャッチする。
俺はどうも、彼に「頼む!」と子犬のような瞳で見つめられると断れないみたいだ。元々サッカー部に入る予定すらなかった俺を飽きずに勧誘してきたときだって、この目をしていた。「サッカーはやらない」と突っぱねた俺は「マネージャーでもいいから!」としつこく返してきた彼に、とうとう根気負けしてしまった。正直、男でマネージャーなんてどうかとも思ったが。


「上手いじゃないかA!」
「ありがとう。ところで、他のみんなはどうしたの?」
「一応誘ったんだけどな……」


あはは、と力無く笑った守に同情する。サッカー部員はマネージャーを抜くと7人しかおらず、更に守以外はどうもやる気がない。まあ、たった7人じゃ公式戦にも出場出来ないし、グラウンドの使用許可も貰えないので仕方ないと言えばそれまでだが。
だから守はこうして休みの日も河川敷でせっせと練習している。


「俺、今年こそはフットボールフロンティアに出場したいんだ」
「前から言ってるもんね」
「でも人数も足りないし、アイツらもああだし……」
「ごめんね、俺選手じゃなくて」
「そ、そういう訳じゃ」
「知ってる。みんなも分かってくれるんじゃないかな? 今はまだその時じゃないだけで」


自分は秋みたいに気の利いたことが上手く言えないけど、「そっか、そうだよな」とどこか晴れたように微笑んだ守に少し安心した。

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むた(プロフ) - 星猫さん» 評価ありがとうございます! とても励みになります。 (2021年9月7日 17時) (レス) id: 43b2fdf14a (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - もう一つのpcがしました。初めまして!とっても素敵です!高評価しました! (2021年9月7日 13時) (レス) id: 7d3fe1e696 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:むた | 作成日時:2021年9月2日 18時

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