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和やかな雰囲気の中、つんざくようなノイズと共に響き渡った声。
『被験番号５０２２、時間だ。』
よく見ると天井にスピーカーのようなものが取り付けられていて、冷たく感情のない声はそこから聞こえていた。
「あー・・・」
「え、今のは？」
「これはねぇ、私をお呼び出ししてるのよ、実験ってやつのね。ほら、胸のプレートに書かれてる番号あるでしょ？それでお呼び出しなの。」
そういえばこの施設に入る前に何かつけられた気がする、と少年たちは自分の胸元を見遣る。名札のようにつけられたそれには、無機質な番号だけが振られていた。
「そんな・・・」
「Aさん、今から、何、されんの」
きっと彼女は知らないであろうことをわざわざ問いかけてしまうくらいには、動揺していた。
過ごした時間は短いながらも、すでに少年たちは彼女のその朗らかな様子に心を開いていた。怯えなくていい楽しく笑って過ごせる時間は、彼らにとって貴重なものであり、それを与えてくれている彼女は『いい人』としか判断しようがなかった。
そんな彼女も、自分たちと同じような経験をしているのか。虐げられ、蔑まれ、人間として扱われない日々を過ごしているのか。
こんな場所にいる以上分かりきったことではあるが、信じられなかった。だから、いざそんな状況を目の前にすると足がすくむ。
「裂かれるか、撃たれるか・・・何かは知らないけど、碌でもないことだろうねぇ」
達観したような彼女の言葉は、あまりにも生々しく辛いものだった。
「んなことしたら死んじゃうじゃん・・・！」
「大丈夫、私は死なないよ？・・・そういうモルモットだから。」
彼女が残した不穏な言葉は、少年たちの脳内をぐるぐると巡ることになった。
そしてそれから二晩、彼女は部屋に戻ってこなかった。
「はぁー、疲れた！ただいまー！」
ようやく彼女が帰ってきたのは、あれから三日目の朝。
着ていた服はボロボロで、出血箇所が正確にわからないほど血まみれ。
「Aさ、・・・」
「んー？大丈夫よぉほら！」
「めちゃくちゃ血まみれだよ！？大丈夫なわけないじゃん！！」
「でも生きてるし、大丈夫！それに言ったでしょ？私は死なないって！」
「死なない、って・・・そんなの、なんの気休めにも・・・！」
「気休めじゃないよ。ほんとに私は死なないの。・・・っていうか、死ねないって感じ？」
続く
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作者名：うさのすけ | 作成日時：2021年11月30日 10時
