パティスリー・リュンヌ 〈WN〉

ホイップクリーム。 ページ28

「おまたせ。おはよ。」

『っ、おはようございます！……こんにちはか？』

「ふはっ、さっき起きたから。何時起き？」

いつのまにかチャコールグレーのチェスターコートが似合いすぎているウォヌさんが目の前に出現していた。

『11時過ぎです。』

「勝った。12時10分。」

……遅い方が勝ちなんだ。

「バス乗るよ。」

『はい！』


隣に座るウォヌさんの横顔に日の光が差す。

「ん？なんか変？ちゃんと寝癖直してきたつもりなんだけど。」

『いや、なんでもないです！』

今日の私は何かがおかしい。

「降りるよ。」

すっと私の背中を支えて、バスから降ろしてくれるウォヌさん。

……わかった、クリスマスマジックだ。この2日間一生懸命ケーキを作る姿がちょっとかっこよく見えただけ。ゲレンデマジックみたいなもん。雪じゃなくてホイップクリームだけど。それで私がちょっとおかしくなってるんだ。

「ん、ここ。」

『食器屋さん？』

「そう。デザートの食器、Aに選んでほしくて。」

『わ、私ですか？』

「うん。一番店の雰囲気を把握してるのはAだと思うから。ティーカップの種類もわかってるし。」

『わかりました。』

私をガラスもの売り場に置いて、ふらふらーっとどこかに行ってしまったウォヌさん。

パルフェ用にステムが短めのすっきりとしたワイングラス、アイス用にすとんとしたタンブラーを選んだ。ソーサーにちょうど良さそうなプレートも選ぶ。
スプーンもいるのか。店で既に使っているフォークと同じシリーズがやっぱり可愛いから、ソーダスプーンとデザートスプーンを買い足す。

「選べた？」

『はい！これだけあれば足りると思います。』

「オッケー。」

『ウォヌさん、重たそう。』

ウォヌさんの手には大きな鍋と保存用瓶が３つ。

「うん。死にそう。会計しよう。」



『ウォヌさん、このあとは？』

「店戻って仕込みする。」

『え、』

「パート・ド・フリュイがこのままだと間に合わないからね。」

『私にお手伝いできることありますか？』

「あるけど、……今日休日だよ？」

『やります！』

パート・ド・フリュイ。→←ビビンバ。

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