パティスリー・リュンヌ 〈WN〉

ミートボールスパゲッティ。 ページ25

WN side

『ウォヌさん、片付け終わったので上いまーす。』

「え？わ、わかったー。」

昼間、上に忘れ物でもしたんだろうか。

最後の洗い物が終わってシンクを磨き上げる。果物は朝一でスニョンが持ってきてくれるとして明日使う分の材料の確認をする。よし、大丈夫。

ｶﾞﾁｬ

家の扉を開けると、鼻を通る懐かしいような匂い。

『おかえりなさーい』

「え、」

殺風景なリビングに似合わない湯気の上がるミートボールスパゲッティ。

『早く早く。伸びちゃいます。』

「なんで？」

『なんでって、いつ借りたってラーメンの袋しかゴミ箱に入ってないから。たまにはちゃんと夜ご飯食べてください！』

「……ありがとう。」

『ふふっ、いただきまーす。』

誰かと一緒に食卓を囲むなんていつぶりなんだろう。別に優しくなんてしてないのに、こいつはどんどん俺の日常に馴染んでくる。

「うまい、」

『よかった！』

この笑顔に癒されてるお客さんがいっぱいいるんだろうな。

「今から帰んの？」

『はい！終電ギリ間に合いそうです。』

窓から星が僅かに輝く空を見る。いつも厨房に篭ってるから気づかなかったけど、こんな時間に一人で帰らしてたのか。

「……泊まりな。どうせ朝早いんだし。新しい毛布買った。」

本当は俺用に買ったやつだけど。

『え、じゃあ、お言葉に甘えて。』


あっという間に俺は風呂に押し込まれて、皿洗いまでやらせてしまった。

「A。これ、あげる。」

不思議そうな顔で受け取るA。

『二つも入ってる。どっちから開けた方がいいとかありますか？』

「正方形のやつ。」

『っ！可愛い。』

店のエプロンと同じ色のベレー帽。

「店立つときに被って。髪も中に入るし、そんなにキツく髪纏めなくて済むだろ。」

お団子にぶっ刺さったピンとか、スプレーでガチガチに固めた髪とか、男から見るとなんか痛そう。

『ふふっ、ありがとうございます。大切にします。』

「もうひとつも開けて。」

さっきのは仕事道具だから、なんならこっちが本命。

『わぁ、手袋だぁ！』

そんなきらきらした顔で見せなくても買ったんだから知ってるよ笑。

「気に入ったか」

『はい！……え、これってもしかしてクリスマスプレゼントですか？』

……そういうことになるよな。デパ地下の流行りを調査がてらただ歩いてたら目に留まって、Aが思い浮かんでかってしまった。

『え、私、用意してなくてごめんなさい！』

「別にいいよ。ずっと頑張ってくれてるから。」

カレーパン。→←チョコプレート。

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