ミルクティー。 ページ23
予約分のケーキの受け渡しが終わって、一旦落ち着いた客足。店内は冬らしい仄暗い静けさに包まれる。退勤ラッシュの時間になったらまた混み始めるから、そんなに休む暇はない。
『スニョンさん、ありがとうございました。助かりました!冷蔵庫にサンドウィッチあるのでもしよかったら食べていってください。』
HS「全然!アルバイトぶりにこういうことしたから楽しかった。」
ウォヌさんが切り揃えたプティガトーを陳列ケースに並べる。紅茶を配るのに使っていた保温ポットも洗う。えっと、次は、
「おい、お前がぶっ倒れるぞ。これ飲め。」
ウォヌさんに渡されたはゆらゆらとマシュマロが浮かぶホットチョコレート。
『あ、ありがとうございます!』
疲れた身体にヒタヒタと染み渡る味。すごい直接糖分を補給している気がする。オッパが言ってた砂糖の塊って言葉が頭の中を反芻する。
『……おいしい、』
エプロンを締め直して、カウンターに立つ。
『いらっしゃいませ。』
来店したのは中学生くらいの女の子ふたり。
「あの、お店で食べることってできますか?」
『もちろんです。ごゆっくりしていってください。』
小学生のとき、初めて一人でケーキ屋さんに行ったときを覚えている。オッパの誕生日のために、お金を握りしめて、ぴかぴかのチョコレートケーキを買って、ほとんど地面から足を離してないみたいにそろそろ歩いて持って帰った。オッパはおいしいおいしいって食べてくれたけど、あの頃から本当は甘いものは苦手だったんだよね。
「私、いちごのショートケーキにします。」
「私も!」
『かしこまりました。紅茶はストレートにしますか?ミルクティーにしますか?』
はにかむようにミルク淹れてくださいって言う姿がとても可愛らしかった。一応、角砂糖も添えておこう。
基本的にひとつずつ違うデザインのティーカップを置いているけど、たまに私の一目惚れで二客を対で取り扱ってるものもある。
『あった…!これこれ。』
菫が描かれたカップ、これはティーポットまで一緒になっている。
ミルクを温めて、お茶を蒸らす。ティーカップに合わせてたお皿にケーキを乗せる。
『お待たせしました。』
二人のお席で最後の魔法をかける。
紅茶をカップに淹れて、ミルクを注ぐとふあっとマグノリアが咲くように広がる。
「「わぁ……」」
そのきらきらの笑顔を引き出すための魔法。このクリスマスが二人にとって素敵な想い出になりますようにと願いを込めて。
1025人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すずな(プロフ) - 犬こそ正義さん» コメントありがとうございます!大変失礼しました。全部訂正できたと思います。これからより一層気をつけます。これからも楽しんでいただけたらうれしいです。 (12月21日 13時) (レス) id: 2b89f0e809 (このIDを非表示/違反報告)
犬こそ正義(プロフ) - めちゃくちゃ好きなお話で一気読みしましたー!ただ「」の中の名前が、たまに”ウタ”に変わってしまってます。。(自分でちゃんと変えてるのに)ご報告までm(*_ _)m (12月21日 11時) (レス) @page50 id: 3d5654d2e4 (このIDを非表示/違反報告)
すずな(プロフ) - ゆにっとさん» ゆにっとさま、ありがとうございます。茶道部!学校におやつを食べられる部活がなかったのでうらやましいです笑。これからも沢山のケーキと一緒に書き進めるので楽しんでいただけたらうれしいです。 (12月20日 22時) (レス) id: 2b89f0e809 (このIDを非表示/違反報告)
ゆにっと - いつも楽しく読んでます!紅茶とお菓子の知識量がすごいし、ケーキに合う紅茶の種類っていっぱいあるんだな……と読むたびに思って、紅茶などのお茶もケーキも好きな茶道部の私にとっては学ぶことが多いです🫥これからも更新楽しみに読みます!🫡 (12月20日 17時) (レス) id: e343824c42 (このIDを非表示/違反報告)
すずな(プロフ) - ノルンさん» ノルンさま。コメントありがとうございます。いつも楽しく拝読させていただいています。キャラメルラテのお話、大好きです。ただ趣味をテーマに妄想をしてるだけですが、これからも楽しんでいただけたら幸いです。 (12月17日 18時) (レス) id: 2b89f0e809 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:すずな | 作成日時:2023年12月16日 22時