パティスリー・リュンヌ 〈WN〉

ダージリンセカンドフラッシュ。 ページ20

『いらっしゃいませ。』

「クリスマスケーキの予約をしたいんですけど。」

『はい！承ります！』


ミンギュさんのお店で取り扱ってもらうようになってから、ぐんと近所のお客さんが増えて、クリスマスケーキの注文も順調にもらえるのになった。


「お嬢ちゃん、この前付けてもらった紅茶なんじゃけど。えーっとなんじゃったか。」

『えっと、ダージリンのセカンドフラッシュじゃないでしょうか？』

この仕事に意外と大事なのは記憶力。

「そうそれそれ。うちのおとうさんも気に入ったから、それを大きな箱で貰いたい。」

『かしこまりました！他にご注文はよろしいですか？』

「あと、クリスマスに孫たちが来るんじゃけど、何か喜びそうなものはあるかね？ケーキは娘が持ってくるようなんじゃが。」

『でしたら、こちらのノエル仕様のクッキー缶は年末までお日持ちしますよ。』

「じゃあ、それの大きいのをひとつ。」

『かしこまりました。お包みしますね。』


近所に住んでるお年寄りや保育園帰りの親子まで来てくれるようになって、やっと私もほっとした。


『ウォヌさん、ご飯食べますか？』

「うん。」

一度客足が途絶えたので賄いの準備。今日はグラタンパイ。
……昨日のシチューの余りだけど。

『召し上がれ〜。』

「いただきます。……あとで試作作るから暇なときに声かけて。」

『わかりました……？』

「多分、Aは気にいると思う。」

何その宣言。今、私ドキッとした？してないしてない。こんな無愛想男にするもんですか。



空気が静かに冷え込んだ20時過ぎ。うちの店でお客さまが多い時間。

『店内でお召し上がりですか？』

「はい。」

『紅茶のご用意をいたしますのでお席でお待ちください。』

お湯の温度を確認して、ティーカップを選ぶ。茶葉を計ってティーポットにお湯を注ぐ。この紅茶は2分半。店内に雑音は立てたくないから紅茶を淹れるのにタイマーは使わず砂時計で済ませる。

『お待ちのお客様どうぞ。』

お持ち帰りのケーキを２つほど詰めて、お会計を済ませるのにかかる時間は2分。お見送りして、砂時計を見ると丁度落ち切るところ。私もずいぶん仕事に慣れた。ティーカップに注いで、トレーに乗せる。

『お客様、お待たせしました。ごゆっくりどうぞ。』

りんごとキャラメルのパルフェ。→←焼菓子。

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