栞を挟むように。Ⅲ〈WN〉 (ページ8)

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眼光。ページ8

You side

YM「古川さん、こっちです。」

『はい！』

作家になるということは担当編集者も付くわけで、今日は編集者の山本さんと打ち合わせ。まさかの働いてる本屋のカフェで……。いろんな作家さんが打ち合わせで使ってると噂では聞いてたといえ、私がその立場になるとは……

YM「今日は大切なお話がふたつあります。」

山本さんはジフンさんに似てて、ぱっと見ちょっと怖い。

『はい』

怒られるのではと身構えてしまう。

YM「12月に一冊目を刊行しましょう。受賞作と12月までに掲載できる2作品、そして書き下ろしを合わせて７作くらいを収録したいです。デビューしてから一冊目までは早いに越したことはありませんから。」

『ありがとうございます！』

人生初の自分の本！

YM「12月中に発売すればあの賞に間に合うので。」

あの賞とは初めて会ったときに目標としてあげた幻想文学の賞のことだ。陶酔してる作家が何人も受賞している。

『がんばります！』

YM「もう一つが、エッセイの連載の話が来ました。」

『え？』

デビュー後に出したエッセイと言えば、新人賞受賞についてのエッセイを一昨日掲載したばかり。

YM「大学時代から古川さんに目をつけていた雑誌だそうです。」

あんなに前のことが今、実を結ぶこともあるんだな。

YM「週刊連載になりますが、大丈夫ですか？」

『やらせてください。』

YM「詳しいスケジュールはあとからメールで送ります。何か気になることはありますか？」

制服姿のうさぎみたいな顔をしたあの子が脳裏に浮かぶ。

『あの、単行本の装丁なんですが、大変烏滸がましいのは承知で、私が指名したい人がいるんですけど。』

YM「あまりに売れっ子だと予算的に困りますが…」

『それは多分大丈夫だと思います。』

YM「なら、いいですよ。」

『ありがとうございます。』

打ち合わせが終わって、夜も遅い帰り道。タイミングがあってウォヌくんと電話してる。

『私の編集者さんが、すごいジフンさんに似てるの。』

「うわぁ、会ってみたいなぁ。」

『眼光が鋭くて怖いよ。締め切り破ったらすごく詰めてきそうな感じ。』

「ふはっ、中身までジフナだね。」

『お家着いたよ。』

「俺もそろそろ休憩終わる。おやすみなさい。いい子に寝るんだよ。」

『おやすみなさい。』

しょっちゅう付き合ってくれる寝落ち電話に慣れてしまって、この瞬間が寂しいけど、指輪を触ると落ち着く。これは魔法の指輪だね。