栞を挟むように。Ⅲ〈WN〉 (ページ48)

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花束。ページ48

WN side

今日はAは小夜さんの事務所でお仕事。明日は韓国に帰る日。
俺には今日どうしても行きたい場所があった。
初めて乗る電車に揺られて、名前だけは何度も書いた町で降りる。
駅前の地図と勘だけを頼りに歩いてみた。

「"いらっしゃいませ！"」

花屋というのは季節が違うと雰囲気が全然違う。

「"あれお兄さん、3年くらい前にも来てくれた"」

「"はい。そうです。"」

「"Aちゃんの彼氏さんでしょ！"」

え、なんでそれを。

「"あの子ね、常連さん、よく来てくれてたの。お母さんのお花買いに。この前は外の植木整理してたら、丁度お兄さんとAちゃんが合流するところが見えたから。"」

店内を見回すと目に入った薄紅色にも紫にも思える色に縁が淡く色づいてる薔薇。

「"あのこれを"」

「"うん。Aちゃんが好きそう。"」

「"花束にしてほしいです。"」

「"本数は？"」

「"おまかせで。"」

お姉さんは形のいいのを選んでAの手に収まりが良さそうな大きさに纏めてくれた。
長めに柔らかく結ばれたリボンまでAが好きそうで、思わず笑みが溢れる。

「"はい。おまちどうさん。"」

「"ありがとうございます。"」

店を出ると、半分だけ夜になった世界に三日月が浮かんでいる。写真を撮ってそのままAのカトクに送る。

ウォヌ今日は21時まで開いているそうです。19時に本屋さんの前で待ち合わせしましょう。