栞を挟むように。Ⅲ〈WN〉 (ページ47)

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タートルネック。ページ47

WN side

昨日、Aはなんとかホテルの部屋まで歩いてくれた。今はほっぺに長い睫毛の影を落として、すーすー寝ている。

着いた日にクローゼットにかけておいたスーツを着る。寒いから中はタートルネックにした。Aは俺がタートルを着てるのが好きだしいいだろう。

『んん、』

お、Aがふにゃふにゃ言い出した。この寝起きの言葉になってない鳴き声みたいなのを聞くのが好き。

「おはよ。頭痛くない？大丈夫？」

あれだけで二日酔いになってたら大変だけど。

『んー、だいじょぶ、…普通に寝起きで頭痛い。』

相変わらず寝起きが悪いね笑。

『え、ウォヌくん、かっこいい。』

枕元から眼鏡を掛けてやっと見えたみたい。

「ご挨拶だから、ちゃんとしなきゃ。」

そう、今日はお墓参りの日。

『法事でもないからそんなちゃんとしなくてもいいのに笑。』

『"このカーネーションを3本ずつ、2束包んでもらってもいいですか？"』

Aは綺麗めのセットアップを着てて、結婚式に招待されたみたいな二人。

『二人とも納骨堂だから、生花は持って帰らなきゃいけないの。でも、同じの使い回しは流石に嫌かなって思って笑。花の種類は一緒だけど、それは一人娘だから仕方ないよね？』

お父さんお母さん、Aさんは本当に素敵な子です。空から見てますよね。

『お母さん、来たよ。今日はね、イケメン連れてきた。』

そんな言い方する？笑

「"娘さんとお付き合いしています。チョンウォヌです。"」

『天国に行ったら韓国語も日本語も関係ないんじゃない？笑』

「そうかもね。」

『もしかしたら、お母さんが好きだったロックスターと一緒にお酒飲んでるかもなって想像することがある。』

この子はこうやって喪失を乗り越えてきたんだろうな。

「お母さん、Aに似てる。」

『そう？お母さん美人だったからうれしい。』

この写真は若い頃のだけどねって照れ隠しするA。

電車に揺られて、お父さんの方に向かう。

『お父さん、ひさしぶり。話してたウォヌくんです。』

「ご挨拶が遅れました。チョンウォヌです。」

お父さんは会えたかもしれないから、亡くなったときはすごく後悔した。

「俺のこと話してたの？」

『名前は言ってないけど、初めてお父さんに付き合ってる人がいるって言った。』

「うれしい。」

Aのことは俺が幸せにしますと、静かに強く手を合わせる。