栞を挟むように。Ⅲ〈WN〉 (ページ44)

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兎。ページ44

WN side

昨日、東京に来た。今、Aは出版社での仕事が終わったみたいで、合流するから出版社の裏口で待ってる。

『"おまたせ！あ、こちら担当編集者の山本さんです。えっと、何て紹介したらいいんだ……例のチョンウォヌです。"』

旦那ではないから困ってる笑。

「"いつも古川がお世話になっています。チョンウォヌです。先日は画面越しの挨拶になってすみませんでした。"」

YM「"いえいえ。日本語がお上手ですね？"」

『"ね、びっくりです。"』

目を丸々とさせてるA。内緒で今日のためにジョンハンに教えてもらったからね。

『"明後日まで、日本にいるので何かあったら連絡ください。"』

YM「"はい。おつかれさまでした。"」

山本さんと挨拶をして、Aと2人でタクシーに乗る。

「たしかにジフナに似てるね。」

『ふふっ、でしょ？すごくいい人だよ。少し話すだけでずばずばと作家の心の深層を切り開くから怖いけど。』

「小夜さんとはどこで会うの？」

『えっとね、奥渋の方のレストラン。やっぱ渋谷で働いてるといいお店知ってるんだね～。』

今日のAはクリスマスイブと同じワンピースを着てる。

「そのワンピース、よく似合ってる。」

『ふふっ、ありがとう。ウォヌくんならそう言ってくれると思った。ねぇ、見て？』

Aが耳に髪を掛けると見えるきらりと輝くイヤリング。

「……アイオライト？」

『せいかーい！一目惚れして買っちゃった。』

俺があげたブレスレットも着けてて、今日は夜の妖精みたい。

少し手前でタクシーを着けて、歩くことにする。

『ウォヌくんすごい緊張してる笑。小夜も、初対面ならそんなキレキレじゃないと思うよ？』

「そうだといいね…」

隠れ家のような薄暗い雰囲気のレストランに入る。

『"おまたせ。ひさしぶり。"』

SY「"ひさしぶり。"」

そこにいたのはふわっとしたうさぎみたいな女の子。

「"はじめまして、チョン・ウォヌです。"」

SY「はじめまして、藤原小夜です。」

「え、韓国語……」

『そこそこ話せるようになったみたいで。』

SY「"先に注文しましょうか。"」

微笑みの奥に鋭さがある気がして思わず唾を飲んだ。