栞を挟むように。Ⅲ〈WN〉 (ページ43)

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冬の木漏れ日。ページ43

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入った部隊もそれぞれ違うから、メンバーが揃うまではカバー動画を出したりブランドのイベントに出たり、ゆったり動いている。……ジフナは同じ日に除隊したから昨日早速作業室に呼ばれたけど。

『仕事終わった～。今日の晩ごはん何がいい？』

「んー、和食？」

『アバウトだなぁ笑。』

マグカップをふたつ持って俺の隣に座るA。

「しょうが焼き食べたい。」

『はーい。』

Aと過ごせるこの時間が愛おしくて、東京の家に泊まったときを思い出す。お昼に作ってくれたうどんも美味しかったのに、しょうが焼き定食を作って、これがはじめての手料理だからね！って俺に催眠をかけようとしてた笑。

「再来週って忙しい？」

『日本行こうかな。現地でやらなきゃいけない仕事がたくさんあるみたいで。』

お、ちょうど良い。

「俺も着いていってもいい？」

『え？』

「Aのお父さんお母さんのお墓参りに行きたい。もし、Aがいいならだけど。」

『私はいいけど、でもバレたら。』

もうバレてもいいんだけどな。

「地味な格好してオーラ？あるのか知らないけど消していくから。」

『んー、わかった。』

「あと、Aの大切な友だちにも会いたいし。」

『小夜？』

「そう、さよさん。」

小夜かぁって難しい顔してるA。

「どんな子なの？」

『うーん。春の夜みたいな子。昼間はぽかぽかしてたんぽぽやすみれが咲いている世界なのに、夜だけは深くて色が見えなくて寒い。でも、どこかにその暗闇を求めてる人がいてそれが私。』

「大切な子なんだね。」

『うん。小夜は私のことは冬の夜って言う。よく言えばどこまでも澄んでいて、でも、冬の空気が刺さるように静かな鋭さを孕んでるって。自分じゃよくわからないんだけどね笑。』

「……少し会うのが怖くなってきた。」

二人揃ったらそこは夜になっちゃうってことじゃん。

『ふふっ、ウォヌくんは私のことどう思ってるの？』

「冬の木漏れ日、かな。何かを暖めるほどの強さはないけど、仄かな光。そこにあると安心するもの。だから、Aが古川ひかりってペンネームだって聞いたとき、感動した。」

……大真面目に話しちゃったな、恥ずかしい。

『なんか照れちゃうね。……ごはん作るね！あ、お肉急速解凍しなきゃ！』

照れ隠しするように台所に行っちゃった。俺の分まだ聞いてないのに。いつかゆっくり聞けばいい。一緒にいる時間はまだまだあるんだから。