栞を挟むように。Ⅲ〈WN〉 (ページ27)

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昼のテレビ。ページ27

WN side

目を覚ますと同時に左手に冷たさを感じる。

「え？A？」

俺の手を握ったまま床に座り込んで寝てるA。

『んっ？…ウォヌくん、起きた？よく寝てたね、よかった。』

「なんでそんなとこで寝てんの。」

『向こうで仕事してたんだけど、心配で集中できなかったから。寝落ちしたのは計画外。』

ごめんごめんと小さなあくびをしながら、体温計の電源を入れて、渡してくれる。

『汗かいてるね。着替えよっか。何食べたいか思いついた？食べれないくらいしんどい？』

Aさん、俺まだ起きて30秒くらいなんだけど。

「ん、下がった。」

37.1℃と表示された体温計。

『ほんと？…んー、これは下がったって言わないの！』

37.5℃で台所に立ってた人に言われたくない。怒ってぷりぷりしてる唇が可愛い。

「Aのうどん食べたい。」

『うち来てくれたときにお昼に作ったやつ……？あれでいいの？』

「うん。あれがいい。」

今年の冬、風邪引いたときもあのうどんが食べたくて仕方なかったんだよ。安心する味。

『野菜……』

「あ、うちないか。」

『うちの冷蔵庫ならあるから、取りに行ってくるね。』

「ん。わかった。」

鍵だけ持って家を出ていったA。ぱたんと閉まるドアの音が寂しい。早く帰ってこないかな。10分くらいで帰ってくるのに何度も時計を見てしまう。スーパーに行くよりずっと早い。同じマンションに住んでてよかった。

『戻りました～。』

「おかえり。」

熱も下がると流石にもうすぐには眠れないから、テレビを見ながら、台所の音を聞く。学生時代、休んだときにやってる昼のワイドショーってなんか見ちゃいけない気がして変な感じがした。

『できたよ～。前回も今回も余りもので作ってるから具は違うけど、味は同じ。』

「いただきます。」

こっちの家でAと二人でごはん食べてるのが不思議な感じ。

「ん、おいしい。」

『よかった。』

ぺろっと完食して、まだ眠くないから1時間くらいテレビを見る。

『ウォヌくん、そろそろ寝たら？』

眠くないんだけど…

「Aが一緒に寝てくれるなら寝る。」

仕方ないなぁって言いながら、俺の手を引いてベッドに入るA。

『おやすみ、ウォヌくん。』

Aにとんとんされてたらいつのまにか寝ちゃってた。

次の日には完全に治ってて、なんなら風邪引く前より元気だった。