栞を挟むように。Ⅲ〈WN〉 (ページ14)

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レジスター。ページ14

You side

私は何回再生したら満足するんだろう。

今日は12/25、クリスマス。例年通り昨日と今日は開店から閉店まで働いていて、昨日帰ってきてすぐシャワーを浴びて寝たら……

ウォヌ不在着信
ウォヌボイスメッセージ 11秒

聖なる夜に電話もできないなんて恋人失格…。「メリークリスマス。愛してるよ、A。」ってメッセージを何回も再生してる。私も何か録音して送ったら喜んでくれるかなって思ったけど、ウォヌくんみたいに綺麗な声じゃないからやめちゃった。

Aメリークリスマス。大好きだよ。

高橋「おつかれさまでーす。」

『おつかれー、店長がクリスマスケーキ買ってきてくれたから、冷蔵庫にあるよ。』

高「やったー、あとで食べよう。さっき今日分の新刊入荷しましたよ。」

『はーい。』

陳列準備のために段ボールから出してワゴンに並べる。

あった。

私の一冊目。本当の発売日は明後日だけど、CDと同じように本も少し早く入荷することがほとんど。

高「この本、Aさん好きそうですね？POP作らないんですか？」

……好きそうどころか、私が書いたんだって。ペンネームで活動してるからバレてない。他の本と一緒に新刊棚に平置きにする。泣きそうになるけど仕事中に泣いたら不審がられるから押さえ込む。

『……高橋くん、今日3階のレジだっけ？ポジション交代してくれない？」

3階は文学のフロア。ジョンハンさんが迷子になっていたところ。

高「いいですけど…？」

『ありがとう。』

在庫状況と連携してるサイトを更新して、入荷分の本を在庫状態にする。

クリスマスでも、仕事帰りやデート前の本の虫たちが続々と訪れる。

『お次でお待ちのお客様どうぞ。お預かりします。カバーはお掛けしますか？』

「お願いします。」

『こちらから商品失礼します。ありがとうございました。』

自分の本をレジに通して、お客様にお渡しする。今までの人生で一番幸せな瞬間のひとつだ。

あっという間に閉店時刻を過ぎて、レジ閉めをして、バックヤードに向かう。新刊売り場に寄り道して、もう一度、古川ひかりと書かれた書影を指でなぞる。しばらく棚を眺めていた。