助手席。 ページ1
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助手席には乗ってくれたから、とりあえず人気のないところまで走る。
『ウォヌくん……』
別れ話をされるかと思って背筋が凍る。
「ん？」
『嘘ついてごめんなさい。』
そんなことで怒ってるわけないじゃん。むしろ許してもらえなくてもおかしくないのは俺の方なのに。
「ヘリンのこと、本当にごめん。何も気づいてなかった。」
酔ってるふりだったことも、Aのこと傷つけてたことも。
本当に俺は馬鹿だ。
『ウォヌくんはヘリンさんみたいな人がタイプですか？』
「俺のタイプは」
ただでさえ緊張してるAの身体にさらに力が入った気がする。
「ショートボブの俺より20センチくらい背が低い優しすぎる子かな。」
『え……』
「ちょっと前までは髪が鎖骨下くらいの長さが好きだったけど。」
適当な路地裏に車を止める。目をパチパチさせてるA。
「好きなのはAだけだよ。たしかに昔そんなことも言ったことあるけど、関係ない。俺はAが好き。」
『……ウォヌくんの嫌いなところがあります。』
え？うそ。本当に嫌われたの？
『誰にでも優しいところが嫌いです。』
Aが苦しそうに涙を流す。
『私だけに優しくしてくれたらいいのに。』
「A」
『でも、そんなこと思ってしまう自分が一番嫌い。』
思わず助手席に乗り出して抱き締める。
「そんなことで自分のこと嫌いにならなくていいよ。当たり前じゃん。俺なんてこんなひどいことしたのに、ジョンハンやジュナがAの涙見たのに嫉妬してるんだよ？それに比べたら全然可愛いもんだよ。」
俺の背中に腕を回して、きゅっと服を掴むウタ。
『………ヘリンさんのところ行かないで。』
「もちろんずっとAといるよ。」
今日はでろでろに甘やかさないといけないな。
そっと身体を離して、アクセルを踏む。
Aが泊まってるホテルの駐車場に着いて、エンジンを止める。
『ありがとう』
ふふっ寂しそうな顔。
「行こっか。」
『え？』
エントランスに入ってチェックインする。
「Aと離れたくないから、このホテルのダブルの部屋取った。」
『……無茶苦茶だよ笑』
だって俺らに今必要なのは時間でしょ？
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作者名：すずな | 作成日時：2023年12月8日 4時
