パティスリー・リュンヌ プティガトー

湯呑〈WN〉 ページ5

ウォヌさんと女の子のいつもの日常。ウォヌさん焦りすぎバージョン。



WN side

定休日目覚ましをかけずに気が済むまで寝ていた。隣の人はもう起きたらしい。

リビングに行くと、シャーペンが走る音がする。

「ん、……おはよ。」

『おはようございます。』

「……早いな。」

『……11時ですが？』

「ふはっ、お湯沸かすけど、なんか飲む？」

『はい！ありがとうございます。ほうじ茶が飲みたいなぁ。」

「了解笑。緑の急須でいい？」

『はい！』

「俺も飲む。」

日本食器店でAが買ってきた湯呑を出す。めおと茶碗という二つセットで売られているものらしい。本来は夫が大きい方を使うらしいけど、Aの方ががぶがぶお茶を飲むからいつのまにか大きいのがAのになっていた。これも俺たちらしくていい。

Aの手元を見ると、店の帳簿をつけてくれてるのかと思ったら違うらしい。何かのテキスト……？

「ん？勉強？」

『紅茶の資格取ってみようかなって。』

「へぇ、初めて聞いた。」

『私もこの前ミョンホさんに初めて教えてもらったばかりなんですけど。意外と転職で役に立つらしくて。』

……転職？

Aは転職したいのか？

そんな素振り見せてないのに？

『……ますか？………ウォヌさん！』

「あ、ごめん。どうした？」

『おにぎりとお味噌汁作ってありますけど、食べますか？』

「あぁ、うん。」

何事もないかのようにお味噌汁を温め直して、自分の分の羊羹を切り始めるA。

『はい。どうぞ。』

ぼーっとしてたらいつのまにかほうじ茶までテーブルに並んでいた。小さなAの手サイズの３つ並んだおにぎりはゆかりごはんで、お味噌汁の具はキャベツとえのき。

「……いただきます。」

羊羹を食べながら、テキストをめくっていくA。……さっきの発言が気になって仕方ない。

「……っ、あっ、」

ぼーっとAのことを見てたら、思いっきり味噌汁を溢した。

『え、もうー！……火傷してないですか？』

ティッシュを何枚か取って、Tシャツとテーブルを拭いてくれる。

「ごめん。」

『気をつけてください〜！』

口元まで拭いてくれようとする手を掴む。

「な、なんか店のことで不満があるのか？」

『え？』

「Aがやめるんじゃなくて、俺が変わるから。だから、」

焦りすぎて自分でも何を口走ってるのかわからない。

『……なんの話ですか？』

「え、だって、さっき転職するって。」

俺が首を傾げると、Aも同じ方向に首を傾げる。

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