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WN side
それでもやっぱり厚くかかった靄が晴れない。元サヤとか浮気とかよくない言葉ばかり頭によぎる。
「おやすみ。」
『ウォヌさん、大好きです、おやすみなさい。』
「ん。」
最近、電気を消すときにAが繰り返すこの言葉。俺は性格が悪いみたいで、あの男との関係をぼやかすための免罪符に感じられる。それにAは俺じゃなくて、自分に言い聞かせるように呟く。
ある日、雲が分厚くて、今にも雨が降り出しそうだった。これは雷が鳴るか。
JN「カーテン閉めて、電気も明るくしてきたけど、それでも鳴っちゃったらこわいよね〜。」
VN「ディノが来てからだといいけど。」
180センチの大男が3人寄ってAの安心安全計画をする。いつものことだ。バレるとAが気を使うからバレないようにちょっとずつやるのが鉄則。
今日もディノが夕方出勤の日。……この曜日はあの男がよく来る。Aが伝えてるのか?
『お店開けまーす!』
「「「はーい。お願いしまーす。」」」
16時過ぎ、大雨と共に小さな遠雷が鳴り始めた。停電してないからパニックにはなってないだろうけど、怖いは怖いらしいから早くこの作業を終わらせて様子を見に行きたい。
VN「……キリがいいところで替わります。」
「ありがとう。この列だけやる。」
言ったところまで終わった瞬間。
ゴロゴロゴロゴロ……ガッシャーーンッ……ゴロゴロゴロ
「A!!」
厨房を飛び出して、カウンターを見てもいない。停電して、ほぼ見えない中、客席にうずくまるAと、
『はあ、はあ、はあ……はあ、』
MN「大丈夫か??A?」
……元カレ。
彼が安心させられるなら俺が出る幕もないか。厨房に戻ろう。
MN「A?どうした?大丈夫?」
繰り返し名前を呼んで、理由を聞くばかりで落ち着かせようとしない男。……もしかして、Aが雷が怖いことを知らない?
『はあ、はあ、はあ、……うぉぬさ、』
俺を呼ぶか細い声を無視することはできなくて、
「ここにいるよ。」
『うぉぬさん、』
「ん。大丈夫。怖かったな。呼んでくれてありがとう。大丈夫だ。俺がいる。電気もすぐつく。」
抱きしめて繰り返し声をかけると落ち着くA。
2分くらいで、ちかちかと復活した電気。
VN「お客さま、お怪我はありませんか?」
MN「ああ、ええ、はい。大丈夫です。」
VN「よかったです。」
Aがぎゅっと俺に抱きつく姿に狼狽えて、席に戻った男。
『もう大丈夫、です。』
「ん。顔ぐちゃぐちゃだから、治しておいで。」
頭を撫でて声をかけると、Aは裏に駆け込んでいった。
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すずな(プロフ) - ゆにさん» ゆにさま、リクエストありがとうございます!お時間いただきますが、投稿をお待ちいただけたらうれしいです♡ (3月9日 21時) (レス) id: 2b89f0e809 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - いつも楽しく読んでいます!☺︎もしよろしければ、妊娠発覚や出産時のお話も読みたいです...! (3月8日 10時) (レス) id: 39bd297dc3 (このIDを非表示/違反報告)
すずな(プロフ) - N。さん» こちらこそ書くのが楽しかったです!目撃オッパを実兄にするかも迷ったんですけど、ハニさんはその場で喧嘩売りに行くだろうなぁと思って笑、ジスオッパを召喚しました〜!周りにイケメンが12人もいるだけで大変なのに……強く生きてウォヌさん!笑 (2月12日 17時) (レス) @page28 id: 2b89f0e809 (このIDを非表示/違反報告)
N。(プロフ) - リクエスト応えていただきありがとうございます!!私の言葉足らずな文にもかかわらず、、。素敵なお話にして下さり嬉しいです!女の子の周りイケメン多すぎて、きっと元彼も出る幕ないですよね。まず兄にぶっ飛ばされる笑 (2月12日 7時) (レス) id: 033fb33b6a (このIDを非表示/違反報告)
すずな(プロフ) - ゆにっとさん» 返信遅くなってごめんなさい!本編を最後まで読んでいただけてうれしいです!温かい読者の皆さまに支えられて、ここまで優しい物語が書けたと思っています♡短編集にはなりましたがこれからもご愛読いただけたら幸せです! (2月11日 21時) (レス) id: 2b89f0e809 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すずな | 作成日時:2024年1月28日 9時