栞を挟むように。〈WN〉 (ページ6)

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11月の七夕。ページ6

You side

ぼーっと考えながら歩いてたら、文芸の棚まで辿り着いてたようだ。

『なんでもない』

TK「えー俺のことかと思ったんすけどー」

この子は高橋くん。大学2年生のアルバイトだ。

『大人をおちょくるんじゃないよー。品出しありがとう。』

TK「はーい。今日Aさんシフト被ってると思ったら入れ替わりで残念です。」

『この本、あと3冊入荷してなかった？』

TK「無視した～。これです。POP作ったんですか？」

基本既刊は一冊しか陳列しないけど、今年からPOPを作った本は何冊か入荷してもいいと言われている。何年も頑張った甲斐があった。

TK「AさんのPOP、俺いつも楽しみにしてるんですよ～。」

『...高橋くんって口上手いよね。社員のおじさんにも可愛がられるし、ホストとかの方が向いてるんじゃない？』

TK「うーー、Aさんってなんで俺にそんな冷たいんですかー」

高橋くんはよく喋るけど力持ちだし、お客さんにもやさしい。そして

TK「でも、なんか今日楽しそうですね？いいことありました？お客さんに一目惚れしたとか？」

嫌なくらい勘がいい。

『お客さんに一目惚れしたところで...また来てくれるかもわからないのに。』

TK「え？？冗談で言ったのに！！まじですか？？どんな人？？」

あぁ、うるさい。私は上がったけど、仕事中だってば。

『夜空にひと粒だけ輝く星、、、みたいな人』

会計しただけでほとんど話してないのに、何でこんな恥ずかしい言葉で表現してしまうんだろう。撤回したい。

TK「いいですね。」

『え？』

TK「めちゃくちゃいいじゃないですか。俺、Aさんがその人と再会できること願ってます！七夕の短冊に書きます！」

本当にこの子は真っ直ぐでいい子だ。

『もう11月だよ。』

TK「あ！そうだけど！！それくらい願ってるってことです！」

『ふふふ、リプトンのレモンティー、バックヤードの冷蔵庫に入ってるから。がんばって～。』

TK「え！？ありがとうございます！！」

再会できることを...か。

ちょっと夢見てもいいかもしれない。