背伸び。 ページ42
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ルームサービスを食べて、出かける支度をする。
俺は寝癖を誤魔化して、車のキーとスマホをポッケに入れたら終わり。
「眼鏡じゃないのも可愛いね。」
『あんまりコンタクト付けることがないから、恥ずかしいです…』
淡いピンクブラウンで縁取られた瞳。ラメも乗せちゃおう…!と楽しそうに呟いてるのが可愛い。鎖骨まで伸びた髪をささっとまとめて前髪にアイロンをかけている。出会ったときは肩に触れるか触れないかのボブだったのに。
友だちが彼女の準備が遅いって愚痴をこぼしてたけど、俺のために可愛くしてくれるとか最高。
『よし!お待たせしました!』
「うん。かわい。」
何回も言っちゃうけど、本当に思ってる。……これでも抑えてる方。いちいち顔を赤くするA。たくさん言うから早く慣れて。
『本当に一緒に歩いて大丈夫ですか?』
助手席に座るウタが不安そうだ。彼女が写真を流出させたら困るから同業者と付き合えと言われたこともあるけど、Aは俺よりも危機感が強そう。
「大丈夫だよ。平日のこの時間ならあまり人はいないし、本屋さんでいちゃいちゃしないでしょ?」
『しないに決まってるじゃないですか。』
信じられないとでも言いたそうな顔。
「韓国語はいつからやってるの?」
『大学で選択科目でやってて、3年くらい離れてたんですけど、ウォヌさんに手紙を書くために必死に勉強し直して。』
「え、そんな短期間でやったの?」
『ハマるとずっと同じことができるから言語習得に向いている性格らしいです。リスニングはまだまだなので、ウォヌさんがゆっくり話してくれるからありがたいです。』
何回か意味が通じない言葉があったけど、調べてすぐに吸収する。耳がいいんだろう。ウジに聞かせたら驚くだろうな。
『この冬は韓国ドラマとお友だちだったから、新刊本に追いつかなくて大変で…笑』
「俺も日本語頑張らなきゃな。ひらがなは読めるんだけど。」
『漢字はほぼ無限にあるから...私も未だに月に10回は新しい熟語に出会って辞書を引きます...』
「ハンボノで話せるようになったら、Aも楽だもんね。」
本屋に入ると、小さな声でわーーっと言って棚に向かって歩き出すウタ。本当に本が好きなんだな。
俺も本屋に来るのはひさしぶりだから新刊コーナーを見て、2,3冊見繕う。あれ、Aを見失った。通路を歩いて棚の間を順番に覗き込む。
『よいしょ、、、届かない』
一番上の段の本を背伸びして取ろうとしていた。
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作者名:すずな | 作成日時:2023年11月20日 16時