栞を挟むように。〈WN〉 (ページ38)

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運命共同体。ページ38

WN side

「『チャーン』」

袋菓子をいくつか開けてチルソンサイダーで乾杯する。
Aさんは、ん！これおいしいです！と頬袋をまん丸にしてて、見ていて楽しい。

「Aさんはどうして本屋さんで働いてるの？」

『うーん...』

難しい質問をしてしまったかな。

『いちばんはもちろん本が好きだったからです。でも、今は本を読む人たちはみんな運命共同体だと思ってます。』

「運命共同体...？」

『一人で買って一人で読む。だけど、そこまで辿り着くには、まず読者がいないと本は発売されないし、ツイートや書評を見なきゃ巡り会えない本、誰かが手放した古本じゃないとありつけなかった本、沢山の人がゴミとして手放してしまったら物語ごと世界から消えてしまう、悲しいことも全部含めて、直接話したことがなくても運命共同体だと思うんです。』

『私はその運命共同体を支えたいなって、より良い出逢うべき本に出逢えるように。迷ってる人が運命共同体の一員になれるように。居心地の良い入口を作りたくて、仕事をしています。...ちょっと喋りすぎちゃったな。』

ダンスへの愛を語るホシと同じくらいの熱量を感じる。話し方はAさんの方がずっと落ち着いてるけど。……じゃあ、俺もAさんと運命共同体だ。

「…かっこいい」

『え…？』

「Aさんみたいな人たちのおかげで、俺たちは不自由なく本を読めるんだよ。すごいカッコいい。」

照れるように目を伏せて微笑む様子が綺麗で見惚れてしまう。

『……ありがとうございます』

『あ！恥ずかしながら、韓国文学はあまり読んだことがないんです。日本では最近翻訳が増えてきたんですけど、もうそろそろ原書でも読めるかな...。』

「明日、本屋さんに行ってみる？」

行きたいです！と遊園地に行く子どもみたいな勢いで即答される。

Netflixを見て好きな作品をおすすめしあったり、俺のゲーム画面をAさんが真剣に見たりしていたら、時間はあっという間に過ぎた。

『あ！ウォヌさんにお土産があります！』

「え！本当に？」

トランクの中から大きな紙袋を取り出す。

『どうぞ。バキバキになってないといいんだけど。』

たくさんの種類の日本の袋ラーメン。それも二つずつ。

『ミンギュさんも食べるかなって思って...！』

「うん。ありがとう美味しく食べるよ。」

ミンギュのことまで考えてくれる。いよいよあいつにAさんのことを話すときが来たか。……3か月も黙ってたって言ったら拗ねそうだな。