栞を挟むように。〈WN〉 (ページ35)

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雑誌。ページ35

You side

大好きだったチョコレートを供える。
いつもなら花束も持ってくるけど今日はない。

『お母さん、一日早く来てごめんね。』

8歳のときに両親が離婚して14歳までお母さんと二人で暮らしてた。土曜日、部活から帰ってきてアイスを食べていたらお母さんの職場から電話がかかってきた夕方をまだ鮮明に覚えてる。

お母さんがいなくなってから10年。私はあっという間にお母さんがいない世界に慣れて、もうすぐお母さんがいたときよりいなくなってからの人生が長くなろうしている。

『今日ね、好きな人に会いに韓国に行くの。お母さんも応援してくれるでしょ？明日も多分デートだから。』

多分お母さんは、もっとキラキラしたアイシャドウの方が良いだとか、そんなずんぐりしたコートじゃなくて可愛いミニスカートを履きなさいとか言ってると思う。

鞄にチョコレートを仕舞って、お母さんにバイバイを言う。

緊張して早く着きすぎた。空港ってこんなに広いんだ。本屋さんないかな。どこかに出かけるとすぐに本屋を探してしまう。時間はたっぷりあるから、いつもはあまり見ない雑誌のコーナーを見てみる。
あ、これは今日発売日の雑誌だ。

SEVENTEEN WONWOO&JUN

『……ウォヌさん？』

表紙はバチバチに決まった俳優さんみたいな男性二人、でも片方絶対に見覚えがある気がする。顔を見たのは11月の本屋だけだけど、それでも私はこの瞳を忘れない。
韓国のアイドル...？そういえばあの時期、KPOPアイドルがたくさん来日してるってバイトちゃんたちが騒いでた。ウォヌさんはアイドルなの...？

本屋を出てカフェに入って、検索エンジンに「SEVENTEEN ウォヌ」と入力する。
メイクをしたライブの写真や眼鏡や帽子を着けたほぼノーメイクの写真。同居人のミンギュさんはメンバーの一人らしい。

『あ、この笑顔...』

本屋に来てくれた人はジョンハンさんらしい。私、KPOPアイドルとずっと文通してて、これから会いに行くの？楽しみでドキドキしてただけだったのに、不安になってくる。ウォヌさんは私が仲良くしていいような世界の人間じゃないんだ。好きになっちゃって期待して、馬鹿だな私。

搭乗時刻はどんどん近づいていた。