栞を挟むように。〈WN〉 (ページ4)

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湖。ページ4

JHside

やさしい店員さんに案内されて、児童文学とやらの棚に辿り着いた。
お目当てだった宮沢賢治の童話集を2冊選んで、棚を眺める。
横に立っているウォヌの様子がすこしおかしい。

JH「ウォヌやー、この表紙ウォヌがいるよー」

面白いからちょっかいかけてみる。

「あー本当だ、黒猫だ。」

いつにも増して返答がつまらなくて面白くない。
その猫ちゃんの本と表紙が綺麗な本を何冊か選んで買うことにする。

JH「ウォヌはなんも買わなくていいの？」

「ジョンハン、画集ってどの階にあるのかわかる？日本語読めない...」

芸術書のところまで連れて行くと、ウォヌは迷わず平置きされていた画集を手に取った。

霧がかかった湖のようなものが表紙に描かれているその本は見覚えがあるけど何故だか思い出せない。

レジに向かうとさっきの店員さんがいた。

『いらっしゃいませ。あ！いい出会いがありましたか！よかったです。お預かりしますね。』

後ろに並んでるウォヌに声をかける。

JH「ウォヌの本も一緒に買ってあげるよ。」

「ううん、これは自分で買いたい。」

ふーん。今日のお礼に買ってあげようと思ったのに。…断られると少し寂しい。

『宮沢賢治、私も大好きです。日本語を勉強してる人が宮沢賢治に出会ってくれてとてもうれしいです。楽しんで読んでくださいねー。ありがとうございました！』

彼女は本当に本が好きなんだろう。
ただの店員がこんなことを言うのも...と少し恥ずかしがるようにしながら伝えてくれた。

本を受け取ってウォヌの会計が終わるのを待つ。
彼女はまるで慈しむかのような目線で本をレジに通し袋に入れている。
ウォヌも緊張しながら、ちゃんと日本語でお礼を言ってて微笑ましい。