栞を挟むように。〈WN〉 (ページ15)

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フラペチーノ。ページ15

You side

住所と何かのID、一番下にはすこし不恰好なカタカナでチョンウォヌと書いてあるメモを手帳から取り出して、テーブルの真ん中に置く。

TK「ふーん、ソウルの住所みたいですね。」

『このIDがなんのやつかわからないの。インスタとツイッターではなかったし。』

TK「ちょんうぉぬ...どっかで聞いたことあるけど、気のせいか。」

『うーん...どうしよう...』

TK「Aさん、大学で韓国語取ってたって言ってませんでしたっけ。」

『取ってたよー。必修の第二外国語じゃなくて、友だちの選択科目に付き合わされただけだけど。だから、話せるほどじゃないよ...』

どうしようもなくてやるせない空気が漂う。

諦めたくないなぁ、この紙を渡して声をかけてくれた彼の気持ちを言葉の壁だけでなかったことにしたくない。

店を出て歩く。冷たい空気が耳や頬に突き刺さる。道ゆく人々はいろんな色のマフラーやコートに身を包んでいて、冬のはじまりを感じる。高橋くんがコーヒーショップのラテをご馳走してくれた。高橋くんは期間限定のフラペチーノ、私は毎年飲んでる好きなラテ、気を使わせてしまっていて、申し訳ない。

『手紙書こうかな...』

一歩前を歩く高橋くんの背中に話しかける。

TK「ん？」

『大学の頃のテキストとか引っ張り出して、手紙書いてみようかな。手紙だったらゆっくり書けるし。どうかな...』

TK「めっちゃ良いじゃないですか！」

高橋くんがいつものニカっとした笑顔で答えてくれる。

TK「Aさん、気づいてるかわからないけど。」

『うん』

TK「AさんのPOPってたくさんのファンがいて、というか俺もその1人で。」

『え？』

TK「Aさんの文章はすごく素敵なんですよ。思慮深くて、本を見つけたお客さんの背中をそっと押してくれる。」

『そっか...そうなんだ...』

うれしくて涙が溢れそうになる。いつも売上の数字だけ見て、自分のPOPを見てるお客さんがいると逃げてしまうから、何も知らなかった。

TK「言語が変わるから、無責任なことは言えないけど」

『うん』

TK「Aさんが一目惚れした人なら、届くと思います。Aさんの気持ち。」

『ありがとう。頑張ってみるね、少し無謀かもしれないけど。』

寒空の下、心がすこしぽかぽかした。