猫。 ページ11
You side
『おはようございます。今日もよろしくお願いします。』
全然眠れなかった。
目を瞑ると彼のことばかり思いついてしまって、昨日買った新刊や画集をパラパラして紛らわしていたら、もう朝方だった。
TK「おはようございまーす」
そうか、今日は高橋くんが朝からいる日だ。木曜日は講義がないらしい。
『今日、レジお願いしていい？品出しと取寄の手続きは私がやるから。』
TK「いいっすけど、Aさん寝不足で重いもの運ぶの心配だな〜」
なんでこの子は気づいちゃうのかな。
『大人の睡眠は自己責任だから安心して。』
TK「まぁでも寝不足で接客する方が無理そうですね。猫外れそう。」
猫被れないことは猫外すと言うのか...？
裏に戻って、取り寄せや予約の発注をとりあえず済ませる。液晶の光が寝不足の目に痛い。何か忘れている気がする。
昼休憩を軽く取って戻ったら、センターから大量の段ボール箱が届いた。なんだこれは。
『あー忘れてた！！』
今日は有名作家の新刊発売日が被ってる日だ！！昨日の夜、高橋くんが売り場を用意してくれたのを忘れてた。
恋に気を取られて仕事を忘れるんじゃないよ、社会人。
陳列して、SNSに入荷情報をあげて数時間売れに売れる。こういう様子を見ると出版業界が大変なのが嘘みたいだ。新刊の入荷日は他の本も売れるので、品出しもキリがない。この様子だと高橋くんはレジの列が途切れなくて大変だろう。あれはシャトルランみたいなものだ。
「『疲れたー！』」
17時18分、若干の残業を終えて、私と高橋くんはなんとかシャバに帰還した。
KW「おつかれちゃん〜」
TK「川上さんやばいっす。なんであのスピードで何時間もレジできるんですか。」
KW「心を無にしてるからね〜」
午後からは高橋くんと川上さんの2台体制だった。たしかに遠目の私から見てても川上さんの方が回転が速かった。
TK「今日こうなるの分かってたんで、昨日Aさんからもらったレモンティーまだ飲んでないんですよ〜。さすが俺。」
休憩用のソファに倒れ込む高橋くんを横目に、コートを羽織ってマフラーを巻く。
TK「Aさん、もう帰るんですかー？」
『こういう日は一回座ったら負けだから。お疲れさまでした〜。』
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作者名：すずな | 作成日時：2023年11月20日 16時
