【 d! 】Jokerは笑わない【軍パロ】 (ページ6)

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　破壊音も、爆発音もーー部屋の前を通る人の気配さえ感じない。部屋に響くのは時計の針と紙のすれる音だけ。
　横で作業をしている書記長も「静かやなぁ……」と思わず言葉を零してしまう程だ。初めは何かを企んでいるのではと怪しんでいた書記長も、お昼をすぎる頃にはその考えもなくなったようである。

　この静かな原因を作ったのは私。裏で静かになるように手を回しているのはきっとゾム隊長だ。

　その事を知る由もない書記長は定期的に、静かやなぁ、と言葉を零す。それに対してそうですね、ぐらいしか返事のしようがないのだが、普段から割と短い言葉で会話を区切ることが多いし彼も彼で特別な返事が欲しい訳では無いのだろう。
　ただ、普段と違う今日という日に慣れないだけで。

　何も問題が起きないと仕事はあっという間に終わる。いや、完全に終わった訳では無いのだが今週の騒ぎで遅れていた分は取り戻すことが出来た。
　ここから先は明日に回せば何とかなるだろう。私が仕事を続けると面倒みが良く責任感のある書記長も休む事をしないので、遅れていた分を取り戻した今はもう完全に脱力してのんびりと過ごしている。

　すごい、夜中まで仕事をしてない……。

「明日からまた騒がしいんやろなぁ……」
「そうですね。かも知れないです」
「暫く静かにしといてくれへんかな」
「そうですね」

　それは無理な話では、とは言わないでおいた。私からしても出来れば静かにして欲しいのだ。望みをかけて余計なことは口にしない。

「今日はもう終わろか。集中力も切れたやろうし」
「ええ、まあ。書記長もお休み下さい」
「おうAも休むんやで」
「ははっ」

　休めるものなら休みたいところだけど。思わず乾いた笑い声が零れる。その笑い声を聞いて書記長はこちらを見てくるけれどそれに答えるつもりはない。
　今日の私に休みなどないに等しい。

　その証拠にほら、遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえる。誰の声なのか考えなくても分かるほど自然に耳に入ってくる声は今のところ複数あるが、その中の一つ。私が最も聞き慣れた声だった。

「ゾム……？」
「それでは書記長、お疲れ様です。また明日に」

　めんどくさいことになる前に撤退しようと席を立つ。が、次の瞬間には勢いよく扉が開いた。力が強すぎて若干扉が傾いているような気がしなくもない。気の所為ということにしておこう。

「A！終わったやろ？静かやったやろ？褒めてくれてもええんやで」

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