【 d! 】Jokerは笑わない【軍パロ】 (ページ5)

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　暫くお互い何も言わず、紙のすれる音だけが響く。もしかすると隊長も寝たのかもしれない。いいなあのんびりと眠れて。そうは思うも、私や書記長のように書類に埋もれていざ戦場に出た時に実力が発揮出来ないと最悪の場合、命を落としてしまう危険性があるのでこのままでもいいかもしれない。言わないが。

　しかし、私は忘れていた。
　彼がーー隊長が、例え眠っていても他人がいるところで意識を落とすことがないということを。

「A」

　完全に眠ったと思い込んでいた私は突然名前を呼ばれ驚く。一拍置いて「はい」と返事をするがきっと気付かれている。私が油断していたことに。
　その証拠に小さくはあるが彼の特徴的な笑い声が私の耳に届いている。

「油断しとった？」

　わかりきっていることを聞くなんて意地が悪い。

「ええ、まあ」
「トントン寝てるしええやん。昔みたいに話してや」
「私はただの書記長補佐なので」
「堅いこと言わんとってやー」
「普通では？」

　普段戦場に出ることがないただの書記長補佐に、何を求めているのやら。
　しかし彼は笑うことを辞めない。これだけ話し声を出しているとそろそろ書記長も目が覚めると思うのだけれど、目が覚める様子はない。それほど疲れていたか、信頼を置かれているか。……前者だな。

「やっぱり訓練しようや」
「仕事がありますので」
「手伝うやん」
「……なんの冗談ですか？」
「俺Aと訓練出来るんやったら書類もやるで」

　例えやったとしてもミスをするでしょう、とは言わなかった。嫌いだという書類仕事をしてまで私との訓練を望んでいるのだろうか。謎である。

　時計の針は既に四時を回っている。そろそろ朝日が顔を覗かせる時間だ。まだ誰かが起きてくる時間帯ではないが、隊長まで眠らずに朝を迎えると言うのは不本意である。あと単純に喋りながらでは作業効率が落ちてしまう。そう考えればこの人邪魔しかしてなくないか。帰れ。

「そうですね、でしたらこうしましょう。今日一日誰も、何も問題を起こさなければ深夜に訓練のお相手をお願いします」

　きっと無理だ。個性派揃いの幹部達が内ゲバもやらずに大人しくしているなんて無理な話なんだ。もし大人しくしていたとしても、それはそれで問題を起こすような人達の集まりであることを知っている。個性派なのも考えものである。

　けれど彼はソファの背からひょっこりと顔を覗かせて不敵に笑った。

「それ、忘れるんちゃうぞ」

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