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 フレジェやブランデースナップ、色とりどりのマカロンを前にオスマンは目を輝かせていた。どれから手をつけようかお菓子の上を手が彷徨う。
 エーミールはその様子を眺めながら紅茶を一口飲んで、ほぅ、と息を吐いた。


 オスマンが気になっていると一直線に向かった場所は自分たちの住んでいる家から少し距離のある、最近出来たらしいカフェだった。従業員も多くはなく、客層も高めで落ち着いた雰囲気がある。
 エーミールは店内を見渡して、半分以上の客が女性だということに身を縮ませる。とてもゆったりとした時間が流れているはずなのに自分は場違いのような気がした。

 オスマンはフレジェをフォークで一口サイズにすくい取り、大きな口を開けて運ぶ。ぱくり、と効果音が着きそうなそれを見て、エーミールは気にしているのが自分だけだと悟った。それもそうだ、ここに誘ったのはオスマン自身なのだから。
 手を頬に当てながらとても幸せそうに咀嚼しているオスマンの周りには可愛らしい花が飛んでいるようにも見える。

 こんなに幸せそうに食べるのなら、自分は紅茶だけ頂くとしよう。机の上に置かれたお菓子は、とても一人で食べる量ではないが目の前に居るオスマンならば、ぺろりと食べ切ってしまうだろう。


「エーミールは食べへんの?」
「紅茶だけで大丈夫です」
「そう?美味しいで?」
「オスマンさんを見ていればわかりますよ」


 くすくすと笑いながら言葉を投げかける。
 オスマンはそっか、とだけ言うとまた無言で幸せそうにお菓子を口へ運ぶ仕事へと戻っていってしまった。



 ――ふと、店内を見ていたエーミールは、近くに座って談笑している二人の夫人が目に止まった。

 特別気になることと言えば、店の雰囲気に合わずその二人が漂わせている暗い雰囲気だけ。
 夫人の周りを確認してみても近くに異形を視認することが出来なかったエーミールは、しかしそのまま意識を外すことも出来ずに人差し指でとんとん、と机を叩く。

 微かな音は、しかししっかりとオスマンへと伝わった。一瞬も止まることなく動いていた口と手が止まり、普段は優しげに緩ませながら閉じている瞳を薄く開きエーミールを見つめる。音が鳴った瞬間に動きを止めたためフォークは口に咥えられたままだ。

 急に動きを止めたオスマンを気にする人はこの場にいない。エーミールは暫くオスマンと目を合わせたあと、ゆっくりと夫人へ視線を動かした。





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うみ - 表現の仕方とか大好きです!ついつい読むのに熱中しちゃいます。これからも頑張ってください!! (2019年10月27日 0時) (レス) id: c63ddd2bb5 (このIDを非表示/違反報告)
雨の止まない街(プロフ) - 初コメ失礼します。皆さんの能力設定好きです。陰ながら応援しておりますので無理をせず更新していって下さい。コメント、評価に関してはとても同感です^^ (2019年10月19日 16時) (レス) id: 73a1ddffb6 (このIDを非表示/違反報告)
うにゅ@最近某戦争屋さんにハマった(プロフ) - コメント失礼します!、私は正直語彙力のなさから上手くは言えないのですが、評価やコメントを欲しいって思ってもいいと思います!、褒めて伸ばすって言葉もあるくらいですから!、もしかしたらこの作品をあまり好きじゃない人もいるかもしれないけど、私は大好きです! (2019年10月16日 7時) (レス) id: aa182fc6be (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 桜藍さん» コメントありがとうございます。頑張って設定を考えたのでそう言って頂けるととても嬉しいです。慣れない書き方をしているのでおかしいところだらけですが.......。能力も今後明らかにしていきますのでお楽しみください。ありがとうございます。 (2019年10月15日 20時) (レス) id: 7f43ca59ce (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 紫陽花さん» コメントありがとうございます。彼が主人公に選ばれた理由は単純にツイッターアンケートと作者の書きやすさからですが楽しんでいただいてるようで何よりです。これからも更新頑張りますのでよろしくお願いします。 (2019年10月15日 20時) (レス) id: 7f43ca59ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作者 | 作成日時:2019年10月13日 0時

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