chapter*4-1...ときめき前夜(前) ページ25
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平日よりも遅い時間。けど休日にしては早い時間にセットされた目覚まし時計は決められた時間丁度に大きな音を響かせる。それを叩きつけるように止めて、まだ眠たい体を無理やり起こした。
重たい瞼を擦って時間通りに起きれた自分に満足する。ぐっと腕を天井にあげて身体を伸ばすと背中からぽき、と小さな音が鳴った。
今日は硝子さんとお出かけする日だ。
初めて会った日に『二人で遊びに行こう』と言われたその言葉はどうやら本気らしかった。お世辞か何かだと完全に思っていた私に対し、硝子さんからの連絡はすぐに来た。
『次の土曜、暇なら遊びに行かない?』
簡単な文章だったけれど連絡に嬉しくなってすぐに行きます! と答えたのはつい最近の出来事。なんなら二日前である。
一方、一番に連絡先を交換したはずの五条さんとは一度もやり取りをしていない。
まあそういう事なんだろうな。あんなに顔のいいひとがただの高校生相手に一目惚れとかやっぱり意味がわかんないし。
前日に決めておいた服を身にまとって、高校生らしく少しだけ化粧をする。髪の毛も普段はしないアップに。
硝子さんは美人さんだったから、同レベルとは行かなくてもそれなりにちゃんとしないと。
必要最低限の荷物だけを詰め込んだ小さな鞄を手に取って、最後に全身鏡の前で一回転。ふわりとスカートが膨らんで揺れた。
チェックを終えて履きなれた靴を履いて玄関の扉を押す。太陽はまだてっぺんに登りきっていない時間帯。真正面から光が刺して眩しくて、わ、と声がこぼれる。
ぱちぱちと瞬きを数回して慣れさせていると、近くから私の名前を呼ぶ声がした。
「恵? おはよう」
「おはよう。お前早いな」
「うん、そっちこそ」
「まあ、少し用事があって」
用事と言う割にはジャージというラフな格好をしている恵はひとつ欠伸をこぼした。朝に弱いという訳ではなかったはずだけど、夜更かしでもしたのだろうか。
恵はちらり、と利き腕とは反対に着けられた時計を見た。
つられて私も時計を見ると予定していた時間よりも少しだけ遅れてしまっている。やばい。余裕を持って時間の設定はしたものの予定よりも遅れてしまいそうだ。
「ごめん! 遅れそうだから行くね」
「おう、楽しんでこい」
普段しない服装をしているからか、恵はそう言って少し笑いながら片手をひょいと上げた。
じゃあね! 小さく手を振って転ばないように気をつけながら走り出す。たった数分、走れば取り戻せる範囲だった。
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希乃夏(プロフ) - pixivでも見させて頂いていたものです!!占いツクールでも公開してくださりありがとうございます!!更新頑張って下さい!! (2021年3月22日 12時) (レス) id: 1e5270c5a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仁篠。 | 作成日時:2021年3月22日 11時