呪術師辞めろと言われたら死んだ。【五条悟】 (ページ24)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:119,669 hit

chapter*3-10...君は僕を弱くするページ24

.
　後ろから聞こえる「早く」という声に慌てて駆け寄ると、ここに来た時と同じように手と手が繋がる。五条さん？と名前を呼んでも知らんふりをされるからそれ以上は言っても無駄だと諦めることにした。

「ねぇ」
「なんですか？」

　帰り道、ずっと傑さんと硝子さんのことをペラペラと喋っていた五条さんが突然雰囲気をガラッと変えて話しかけてきた。すごく隣から視線を感じるけれどそれを無視して前を真っすぐ見た。

「僕のことは名前で呼んでくれないの？」

　ぎゅっと繋がれた手に力が籠る。けれど決して痛くはない。元々力があまり入っていなかったのもある。力が入ったのを感じても、こちらから返すことはしなかった。

「そうですね」
「なんでさー！傑と硝子が良くて僕がダメな理由は何？」
「むしろ呼び方にこだわりすぎでは？」
「好きな子からは名前で呼ばれたいものでしょ」

　さらっとそんなことを言うけども。

「そもそも私、五条さんが私のこと好きっていうのも信じてませんからね」
「うそでしょ？なんで？」
「なんでって言われても……」
「一目惚れ信じるって言ってたのにー」
「あるんじゃないですか？とは言いましたね」
「否定する要素もない、とも言ったよね」

　そうですけど。確かに言ったので否定もできず口をもごもごとさせるしかできなかった。

　するりと離れていく手に首を傾げていると今度は指が絡まって、そのまま優しく包み込まれる。繋がれた手が持ち上げられて、少し屈んだ五条さんはが私の手の甲にキスをひとつ、落とした。

「ご、ごじょうさん、」

　可愛らしいリップ音がやけにはっきりと聞こえた。こういったことに慣れていない私はじわり、と顔に熱が集まるのを感じて慌てて逸らすも意地悪な笑い声が聞こえるからきっと隠せてない。

「今はこれでいいや」

　嬉しそうな声が頭の中で響く。
　ぱたぱたと顔の熱を冷ますために空いてる手で煽りながら、誤魔化すように「早く帰りますよ」と腕を引っ張った。
.