chapter*3-5...君は僕を弱くする ページ19
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全く知らない人間に包囲されてしまった。残念ながら本当に隅っこの席なので女性の反対側のすぐ近くには壁がある。どう頑張っても逃げられそうにない現状に頭を抱えたくなった。なんだかんだ五条さんの時はいっか、と思っていたもんだから、余計に。
目の前に座った男の人はどことなく嬉しそうにニコニコと笑っているが胡散臭さも捨てきれない。特に何を言うわけでもなく、ただ、目の前に座っているだけ。これも五条さんが来たら帰ってくれるだろうか。そんな淡い期待を抱いて、早く来てくれと願うばかり。
「あの、……どこかで会ったことあります?」
疑問に思ったことを口にする。なんてことない質問のはずだった。それなのに目の前の男の人は一瞬だけ表情を崩した、ような気がした。
「お待たせ〜! ってあれ、もう来てたの」
私が次に口を開く前にトレーを両手で持った五条さんが現れる。
場所、わかったんだと思うよりも先に、彼の言葉が引っ掛かった。
「五条遅い」
「え〜これ僕悪くなくない? てかなんで傑はこいつの前に座ってんのさ。そこは僕でしょ」
「早いもの勝ちだろう?」
「……次は絶対僕だからね」
「それはどうかな」
ぽんぽんとテンポ良く交わされる会話に目を白黒させるしかできない私。
渋々といった様子ですぐると呼ばれた人の隣に五条さんは座った。
テーブルの上に置かれたトレーの上には私がお願いした飲み物と、到底一人では食べきれないであろう量のポテトやナゲット、しまいにはバーガーも乗っていた。
はい。五条さんは長い腕を使って飲み物のボトルを私の前に置くけれど、それよりも聞きたいことがたくさんできた。
「なんて顔してんの」
五条さんは笑うけど、一体私はどんな顔をしているんだろう。きっと、どんな顔をしていても納得できるけど。だってこの状況を理解するのは、あまりにも情報が少なすぎる。
わかるのは私の名前を知っているのは五条さん経由だろうということ。そして五条さんと仲のいい友人なんだろう、ということだけ。
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希乃夏(プロフ) - pixivでも見させて頂いていたものです!!占いツクールでも公開してくださりありがとうございます!!更新頑張って下さい!! (2021年3月22日 12時) (レス) id: 1e5270c5a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仁篠。 | 作成日時:2021年3月22日 11時