chapter*3-4...君は僕を弱くする ページ18
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時間帯が時間帯だからか、ピークほどではないにしろ店内は少し混みあっている。主に学校帰りの学生が溢れる中、指定通りの席を探すのには苦労するかとも思ったが、案外それは早く見つかった。
端っこのあまり人が近寄らないような場所がちょうど空いている。レジにいる五条さんからは死角になっているが、まぁ最悪連絡は取れるので。
わざわざ指定してくる辺り、五条さんは注文を大量にする予定でもあるのだろうか。
五条さんを待っている間、しまったスマホをもう一度取り出して返信がないか確認すると『あんまり遅くならないようにね』と通知が来ていた。
それに何かを返すわけでもなく既読だけをつけて確認していることを相手に知らせる。
だらしないとはわかっているが背を丸くしてテーブルに頬杖をつく。視線はスマホに固定されたまま。
「A?」
不意に、聞きなれない声が私の名前を呼んだ。
反射で声のする方を振り返ると、知らない人が二人、驚いたように私のことを見ていた。一人は長い髪を後ろにまとめているようで、前髪が特徴的な男の人。もう一人はクールな印象を与える美人な女の人。二人とも顔が整っている。
えっと、会ったことあったっけ?
流石に知ってる人なら忘れないと思うんだけどなぁ。
私は首を捻りながら、お互いがお互いを凝視する謎空間が出来上がってしまった。
もしこの二人がこちらを見ていなければただの聞き間違え、もしくは同名の誰かを呼んだとも思えるのに。残念なことに二人の視線は私に固定されてしまっている。
「あの、」
先に声を出したのは私。きっともうすぐ五条さんもやってくるだろうし、そうなったらこの空間を見て困惑させてしまう。そう思ったのに、男の人が柔らかく目元を緩めて、落ち着いた声で「ごめんね」と言うから。私もほぼ条件反射のように「大丈夫です」と返した。
「隣、いい?」
「え!? えっと、私一人じゃなくて」
「知ってるよ」
「え?」
女の人が淡々と答える。結局私が許可を出す前に隣に座りだした女の人に、どうするべきなのだろうか。男の人は私の向かい側に座ってしまったし。
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希乃夏(プロフ) - pixivでも見させて頂いていたものです!!占いツクールでも公開してくださりありがとうございます!!更新頑張って下さい!! (2021年3月22日 12時) (レス) id: 1e5270c5a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仁篠。 | 作成日時:2021年3月22日 11時