chapter*1-1...大嫌いだから、生きていて。 ページ1
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いつもと変わらない朝だった。いつもと同じ時間に目覚ましは鳴るし、特別気温が高いだとか、低いだとか、めちゃくちゃ晴れてるだとか、土砂降りの雨だとか、そういうことは無い。なんて事ない、一日の始まり。
真っ黒な制服に身を包んで行き慣れた道を歩いて、ちょっぴり古くなった扉をスライドする。ガタガタと煩くなる音ももう耳に馴染んでしまっていた。
「おはよー」
教室の中に居たのは五条ただひとり。硝子と夏油はどうしたんだろう、と思いながら足を踏み入れて挨拶をするも彼は視線を寄越しただけだった。
「硝子たちは?」
「知らね」
短く切られた言葉はとてもひくく、たったそれだけで今彼が不機嫌なんだと察する。朝に弱い訳でもないのに、何かあったんだろうか。
仕方がない、先生が来るまで暇だし、任務だって昼からだ。唯一暇を潰してくれる五条は今不機嫌だし。
机に頬杖をついて、ただ変哲もない窓の外を眺めていた時だった。
横から、五条が何かを言う。それはあまりにも小さな声で、きちんと聞き取ることができなかった。わざわざ機嫌の悪い五条の相手をする程馬鹿ではない。けれどここで無視をしたらしたでめんどくさい事になるのは今までの経験上理解していた。だからわざわざ体の向きを変えて、五条を視界に入れる。相変わらず口をへの字に曲げて、鋭く尖らせた目をこちらにやっているその表情は初対面であればビビり散らかしていただろうに。
残念ながら、もうそれを怯えるほど彼を知らない訳ではなかった。
「なんて言ったの?」
五条の不機嫌さが移ったらしい。口から出た言葉は自分が思っていたよりも低くて驚く。これじゃあ何もこいつのこと言えない。しかし、そんな事で怯むような五条でもない。
だから、と区切った五条は、私には到底理解出来ないことを口にする。
「――お前、今すぐ呪術師辞めろ」
丸いサングラスによってその奥は見えない。五条が何を考えてその言葉を私に言ったのか、その意図を探ろうにもサングラスが邪魔で出来やしない。
口から溢れ出たのは短い呼吸の音。何も返さない私に、更に期限を悪くした五条は「聞いてんの?」と続ける。
聞いてる。聞いてるけど、そんな。
「……なんで、」
声が、震えた。
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希乃夏(プロフ) - pixivでも見させて頂いていたものです!!占いツクールでも公開してくださりありがとうございます!!更新頑張って下さい!! (2021年3月22日 12時) (レス) id: 1e5270c5a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仁篠。 | 作成日時:2021年3月22日 11時