続き ページ38
跡部「まぁ、あまりにも暇だったら親父のこと気にせず帰ってもいいからな」
貴『お気遣いありがとうございます。景吾様』
景吾様は他の人への挨拶があるからと私から離れていった。
それから暫くして私と同い年くらいの青年が入ってきた。
彼は景吾様と一言二言交わすと、私の方にやってきた。
手塚「すみません。よろしいでしょうか」
整った顔立ち、スラリと伸びる長い脚。
切れ長の目は私だけを映している。
貴『はっ…はい…』
何故だろう、すごく鼓動が早い。
手塚「始めまして、私は手塚国光。陸軍に属しております」
礼儀正しく話す彼に、私は失礼のないように話そうと口を開いた。
貴『手塚様、ご丁寧にありがとうございます。私は中村Aと申します。
もしやあなたは父の…?』
手塚「はい。中村中将にはお世話になっております。先程跡部より貴方がいらっしゃると聞きましたのでご挨拶をさせていただきました」
貴『やはり父の…』
手塚様は少しだけ微笑んだように見えた。
その顔がとてもきれいで…
手塚「いかがなさいました?」
貴『えっ、あ、何でもありません!それよりもあまり敬語を使わないでください』
手塚「ですが…」
貴『私は父と違い、ただの学生ですから』
手塚様はちょっと俯き考えたあと私の方を向いた。
手塚「では、そうさせてもらう。貴方も楽にしてもらって構わない」
貴『わかりました』
私達はそこからずっと喋り続けた。
彼はとても聞き上手で私ばかり喋っているようです申し訳なかったが、彼は私の話を聞くのが楽しいと言ってくれた。
今までの男性は自分の事を話したがるばかりだったから、彼の言葉がとても嬉しかった。
それから私と手塚様には本が好きという共通点があった。
その中で私は最近読んだある本を思い出した。
貴『手塚様はシンデレラを読んだことありますか?』
手塚「シンデレラか、西洋の話はあまり読まないからな…。名前だけなら知っている。どんな話だ?」
貴『義理の母と姉にいじめられているシンデレラ、という少女が舞踏会に行くために魔法使いの力を借りて美しいドレスとガラスの靴を身にまとい舞踏会にゆくのです』
手塚様が興味深そうにしているので私はそのまま続けた。
貴『シンデレラは王子様と出会い、二人は惹かれ合うのですが、魔法の溶ける十二時になってしまいシンデレラは名乗りもせずに自分の家に帰ってしまったのです』
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作者名:ブラックトランペット | 作成日時:2019年6月29日 15時