僕の砂糖は甘すぎる。*ジンシュガ (ページ21)

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前に注意。ページ21

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息が詰まるような、目が眩むようなその光景に、溜まった唾液を飲み込んで、自分の唇についた結露を舐め取る。
お風呂が癒されるなんて、前言撤回だ。
全く心も体も休まらないし、気が気じゃない。

「...あの」

「え、あ、なに?」

ユンギが、肩をすくめた。

「....当たって、る......」

「え?......ッ!」

一瞬何の事かと思ったけど、...なんてこった。

僕は男だ。
もし男が恋人を、ましてや裸の姿なんかを見て、それに対して丁度今の僕のような心境になったとする。

...つまるところ、反応するモノはしてしまう。

「ご、ごめん...やっぱり僕上がろうかな、はは」

僕は焦って、ザバッと浴槽から立ち上がった。
体積を失ったお湯たちは、揺ら揺らと波を立てる。

もう一度言うが、僕は男だ。
いくら料理が上手いだとか、唇が厚いだとか、女性的だとか、そんな事を言われようとも、れっきとした男。

男は狼だと言う。
そんな狼の前に、可愛らしくて美味しそうな子猫が無防備に座っているとする。

狼はどうするか、子猫はどうなるか。
そんなもの、火を見るより明らかだろう。

それなら敢えて、僕は子猫を助けよう。
自分の食欲は自らの肉で補おう。
狼の理性はギリギリのところで持ち堪えられる。

...それなのに、僕の手首を掴んで離さない、困った子猫が此処にいる。

「ユンギ、僕あがるんだってば」

「駄目、」

「なんで」

思わず声のトーンが鋭くなる。

ちがう、傷付けたいんじゃない。
傷付けたくないんだ。

求めたいだとか、求められたいだとか。
そんな事を考えては居たけれど、いざこんな状況になると怖くなる。
だから自衛する。
ユンギに嫌われちゃわないように。

だから、ねえ、離してよ......早く。

...じゃないと、

「俺とじゃ、駄目なんですか」

つぶらな黒目が、僕を見上げる。

「....シましょうよ」

「っユンギ....」

子猫が、狼に腹を見せて寝転んできた。

.....僕はもうクラクラだった。限界だった。
利口な狼の理性は、呆気なく砕け散ってしまった。