． ページ47
＊
「ゲームやってんなら帰れ、俺はまだ掛かる」
こちらも見もせずそんなこと言われちゃ、鬱陶しがってるのか気遣われてるのか分かんない。だけど、多分両方。
短針はとっくに３を追い抜いて、長針はもうすぐ頂点に辿り着きそうだ。この時期、あと一時間もすれば外は明るくなってしまう。
「ヒョンが寝るまで待っててあげますよーう」
「頼んでねえ.....」
はっ、と呆れたような渇いた笑いを零しながらヒョンは液晶と向き合ったままだ。
同じ人間なのに、よくそんなに寝ないでいられるものだと謎に感心してしまう。
「........」
『 ミンユンギは死んだ 』
もう5年が経とうとしている。
“ August D ”
誰も知らなかった、もうひとりのミンユンギ。
....あれ以来、どうも勘ぐってしまう。
こういう日常に溶け込んでいる些細な事柄も、実はヒョンにとってはゆるりと身体を駆け巡る毒のようで、俺たちは愚か、本人すらも知らないうちにヒョンを追い詰めているんじゃないかって。
「ヒョン眠くないの」
「少し眠い方が、かえって頭冴えて捗るんだよ」
そう言って、ヒョンはヘッドホンを付ける。
「変なの」
天才ってそんなもんなの？
俺は眠かったらダンスの練習は正直しんどいから、ちゃんと寝て次の日にまた練習しようって思うけど。
『 ミンユンギは俺が殺した 』
どうして、自分を殺さなきゃいけなかったんだろう。
自分が死んでしまわないように、他を傷つける方が楽なのに。
ヒョンがそうしないのはきっと、彼のなかでは「自分から逃げること」だから。全部の責任や根源は自分にあるって思ってるから。
恐らく今だって、あなたの切っ先はいつもあなた自身に向いている。
「ユンギヒョン」
「....」
「ねえ」
「....」
集中しているから邪魔するなってことかな。
でも、ここでまた引き下がったら。
「ねえってば」
「....お前....」
ヒョンのヘッドホンをひょいっと外せば、三角の目が俺を睨んでくる。
「...海、行かない？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 249人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すぴやな(プロフ) - 塩茘枝さん» 塩茘枝こんにちは！いつもコメントありがとうございます。好きって言って貰えるのが一番嬉しいです笑 がんばります！ (2020年8月21日 22時) (
レス) id: 3b988406b4 (このIDを非表示/違反報告)
塩茘枝(プロフ) - こんにちは グクミンのケーキのやつ、とっても好きです！！更新頑張ってください！ (2020年8月21日 20時) (レス) id: 9b30e15365 (このIDを非表示/違反報告)
セジュン(プロフ) - せつない…………煙草嫌いだけど純粋にぐっときた……めっちゃえもーしょなる…………… (2019年4月27日 7時) (レス) id: c623726b4a (このIDを非表示/違反報告)
すぴやな(プロフ) - ななさん» ひぇぇ....どれも私には勿体なさすぎる言葉です。ななさんありがとうございます...！！；； (2018年12月4日 22時) (レス) id: 3b988406b4 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - なんかもう、、表現の仕方がうまいというか 、プロというか、天才というか 、簡単にいって神ですかね 。 (2018年12月4日 20時) (レス) id: 9910436c5b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：すぴやな
| 作成日時：2018年7月13日 0時
