柒 ページ8
花子side
生きていた頃の話だ。
放課後、枝垂れ桜の下で…
それが2人だけの合図だった。
彼女と出会ったのは咲き誇る枝垂れ桜の下だった。
1人になりたくて逃げたそこへ、少し息を切らして現れた彼女は、俺を見つけるや否や迫ってきて……逃げようとした俺は手首を掴まれて……
「逃げないでくださいませ。大丈夫、大丈夫ですから少しおまじないをさせてくださいませんか?」
花子「おまじない?」
「はい。あっ、決して怪しいものではなくて…その傷をお癒しできたらなと……」
花子「っ!い、いいから余計なことしないで!!大体おまじないで傷が治るなんて信じられない」
傷を癒す?到底信じられることじゃなかったし、もし可能だとしても別に傷を治してほしいだなんて思わなかった。
だから、思いっきり掴んでいた手を振り払う。
彼女はそれに申し訳なさそうに謝って、名前を名乗った。
「いきなりごめんなさい。どうしても気になって……私、皇Aです。もし、何かあればー」
視界が暗転した。次に目を覚ますと暗転する前より日が沈んでおりあたりは薄暗くなっていた。
「目覚められましたか?余計なこととは承知の上で熱の症状だけ癒させていただきました……お加減はいかがですか?」
話しかけてくれた彼女には悪いがしばらくぼーっとしていた。それに、まだ熱が治っていないか心配した彼女は俺の額と額を合わせて確認してきた。
羞恥に一気に思考が回りはじめる。
花子「あ、あ、」
「やはり熱はないよう……お顔が赤いですわ!どうしましょう失敗するなんて思いもっ」
花子「大丈夫だから熱はないから!!」
ゴツ
確認して大丈夫だったのか、離れていった彼女だったが俺の赤くなってしまった顔を見て慌てはじめた。
それを静止すべく、身体を起こすと勢いよく額どうしがぶつかった。
「きゃっ!?」
花子「いつっ、ごめん。」
「いえ、お気になさらず。それよりも、本当に回復されたようで安心いたしました。」
花子「……うん。ありがとう、皇さんのおまじないって本当に効果あるんだね」
「はい!」
そこから、Aと仲良くなって彼女に会えるのが楽しみになっていた。
あの日が来るまでは……
少年がいった地縛霊の話。
その地縛霊は彼女なのかもしれない。
あの日以来そこへは近づいていなかったし、彼女の行方知らなかった……だから行ってみよう。
そして、もし本当に彼女だったならあの日言えなかった言葉を伝えよう。
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あかり - 面白くて続きが気になります!更新頑張って下さい!応援してます! (2021年5月31日 0時) (レス) id: 0c79b72284 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あや | 作成日時:2020年4月5日 22時