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あれから無事着地して、人気の無い所でAとある約束を交わした。
まず、もう互いに会えないという事。
テヨンさんとアジトの片付けをしてから組織自体から抜けて姿をくらますらしい。
その為には、もう会えないし会わない。
いつ俺の命が狙われるか分からないからって。
俺なら大丈夫だ って言ったのに聞かなかった。
「またいつか会えるよ。」
Aはそう言い残して、走り去ってしまった。忽然と居なくなったAの部屋は、一人暮らししていた時より寂しくて
Aの匂いがするベッドや、Aが好んで使ってたマグカップ、締まってある一緒に飾り付けをしたクリスマスツリーを見ると、喪失感に溢れて、涙も止まらなかった。
片想いの気持ちを、やっと通わせたと思ったのに、突然居なくなるなんて、最初から最後まで不思議な女の子だった。
それから半年後、Aの連絡先は使われてない物となり、Aの匂いは完全に消えた。ていうより、残っていたら逆にあの頃の記憶を思い出してしまうかもしれない。
そしてあっという間に1年後のクリスマス。
Aとよく行っていたカフェ屋さんに行って、ふたりして飲めなかった珈琲を頼んだ。
その時、お店のBGMで流れたのは、Aがよく歌っていた もしくは鼻歌で歌っていた曲だった。
『そろそろ出なきゃ…。』
いくら喪失感や虚無感に浸ってたって、バイトや大学が忙しいという事に現実に引き戻される。
真冬の並木道を歩いている時、ふと懐かしい香りがした。Aの香りだった。それから、Aがよく歌っていた鼻歌も聞こえた。
ばっ と後ろを振り返ると、栗色のふわふわの巻き毛の後ろ姿。
『なわけないか…、笑』
俺の手元にはもう無いけど、彼女は正真正銘
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僕が拾った女の子 だった。
Fin___ .
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作者名:Jane | 作成日時:2017年2月5日 21時