僕が拾った女の子 (ページ42)

今日:27 hit、昨日:21 hit、合計:106,778 hit

42 ページ42

.

信じられなかった。

テヨンさんの口から出てきたAの正体を。

『スパイ… って…、』

TY「君も見たでしょ？
彼女の狙撃の腕前。」

言われてみれば、遊園地に行った時、やけに上手くて見とれるほどかっこよかった。

TY「18になって最初の仕事は、立てこもりの人質を助ける、ただのスナイパーだった。
だけど人質に囚われた相棒を助けようと銃を構えた時、犯人はAの相棒を撃った。」

「犯人は酷い薬物乱用者で、取り調べの時には撃った事を覚えていなかった。」

『そんな…。』

TY「相棒は何もかもを教えてくれた男の先輩だった。目の前で殺されたショックと助けられなかった自分への失望の戒めに、Aは腕に根性焼きをした。それも真顔で。」

『あの傷は…、自分への戒め…。
真顔で？根性焼きって痛くて熱いんじゃ…』

TY「俺は必死で止めたよ。
こんな傷一生残るって。なのにこんなのあの人の苦しみや痛みに比べたら何ともないって言った。」

今まで俺は、Aの何を見てきたんだ。

嬉しそうに、楽しそうにするAしか見た事が無かった。

何故聞こうとしなかったんだろう。

あの時の俺は、Aの過去を知ったら逃げていたと思う。

きっと、Aはそれを恐れたんだ。

『俺…、Aに何もしてない…。』

TY「あとはAから直接聞いて。
じゃあ俺は失礼するよ。わざわざごめんね。」

『いえ、ありがとうございました。』

テヨンさんが去ったあと、エプロンを脱ぎ捨てて無我夢中で家に戻った。

テイルヒョンに呼び止められたけど、今はそんなの気にしてる暇すらない。

一刻も早く、Aの事を知らなきゃ。

どうか、逃げないで＿＿＿＿＿。

.