恋蛍～あの日の君に、また～ (ページ2)

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鏡花水月ページ2

その日の夜夢を見た。
　

私は高いビルの屋上に居た。
夜景を見ながらボーッとしていたら
扉が開いた音がした。

思わず振り向くとそこには男性が立っていた。
『ここでなにしてるの？』と聞かれるが

『あんたが先に答えなよここに何しに来たの』

『僕は悩み事があるとここに来て考える。
1人でね。でも今日は君がいた。それで君は？』

『ここに立ってると色々見える気がするの。
ほらあそこ。こんな時間なのにオフィスの電気がついてたり、荷物を運んでくれるトラックとか、工事の人。あそこには酔っ払ってる人。でもみんなはここにいる私の存在には気づかない。私が居なくなっても気付かない。そのまま時が流れていく』

『でも僕は君の存在に今さっき気がついた。
君が居なくなったら、僕は分かるよ。』

『何が分かるの？今さっき会ってこれから会うことないでしょ』

『君以外とめんどくさいね。
みんなそれぞれの時が流れてる。正直君が居なくなったって僕はなんとも思わない。けど君の周りは？』

『私には誰もいない。家族もいない。友達もいない。』

『それは嘘だよ。人間は1人で生きてけない。
誰かの温もりの中で生きてる。』

『うるさいな！！私は1人なの！！
家族は事故で死んだ！私のせいで！私のこと知らないくせに！！
助言なんていらない！なんの気安めにもならない』

『確かに君のことは知らないね。けどわかったことはあるよ。今ここにいる理由って家族のところに行こうとしてたんでしょ。』

『、、、』

『それでもし君が死んだとする。
確かに死んだら今の寂しさから解放される。
でも君の意識も思いも全て無くなるかもしれない。
家族の存在も楽しかった思い出も忘れてしまうかもしれない。
それに死後の世界なんてあるかわからないけど
必ず家族のところにいけると確約されているの？

そもそも人間は必ず死ぬ。
嫌でもそっちにいかなければならない。
その時じゃ遅いの？

その今抱えてる寂しさに始まりがあったなら
必ず終わりがくる。その寂しさを乗り越えられる日が来る。

"君はたまたま生き残った。"
それだけだろうけど、
その命は君が会いたくて堪らないお母さんたちからもらったものだし、事故にあったときも命を君に吹き込んでくれたのかもしれない。

その1つしかないもの、残材に扱うなんて、
すごく愚かだね。』