＊ ページ30
.
『時計塔で死体が発見された後、時計塔周辺にいたから、不審人物として逮捕されたらしいの。
しかも、クギ打ち用のハンマーも所持していたって。
ただね、逮捕された本人は「大時計の修理をしていたんだ」って言っていたみたいなんだよね』
ハ「…それが本当なら、少年の言う通りだがな」
ハラちゃんは細く息を吐き出し、やれやれというように肩をすくめた。
"連続密室殺人鬼クギ男"
図書館で過去の記事をまとめていた時にも話題に上がった。
ここ最近起きてる
まさか、その事件の犯人がちょうど逮捕されるなんて。
誤認逮捕だった場合は、あの男の子の父親に申し訳ないけれど…
どの事件の調査から取り掛かるか決めあぐねていたこちらとしては、ちょうどいい指針になったと言わざるを得ないだろう。
隣に座るハラちゃんの肩に、そっと頭を乗せて寄り掛かる。
『…ユーマくん、きっと来るね』
ハ「…いつもの勘か？」
『そんなカンジ〜。
…でも、ハラちゃんだってそう思ってるでしょう？』
だって、ユーマくんは記憶喪失なんだもの。
それを抜きにしても、まだ見習い。
本物の現場を見て、調査をする。
そんな機会はアマテラス急行の一件が初めてで、今回はまだ二回目のはずだ。
しかも今回の事件は 過去に起きた複数の事件とも絡んでいる為、そちらの調査もしなければいけない。
ほぼ初捜査の彼からしたら、荷が重すぎるだろう。
ハラちゃんも ここまで推測しているから、こうして何も言わずに私と時間を潰している。
ハラちゃんにとって、
それでも、後輩を見捨てる程 冷血な訳じゃないから。
ハラちゃんのわかりにくい優しさを感じて、くふくふと笑みが溢れる。
それを見たハラちゃんが、照れを隠すように不満そうな顔をして 私の頬をつついた。
…あぁ、早く来ないかなぁ、ユーマくん達。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鈴奈 | 作成日時：2023年7月12日 1時
